宇宙の塵
私は、塀の中に居た。
そこで生まれ育った。
塀の中から、同じ時代を生きる人々の幸せを見ていた。
私は、塀の中で、輝く若い時間を失った。
ようやく目にした大海原では、ずっと独りだった
誰もいない世界で、時間だけが過ぎていった。
誰もいない世界で、身体と精神が蝕まれていった。
晩年、孤独ウイルスに細胞を食い尽くされた私は、寝たきりになった。
誰もいない部屋で、儚い死を遂げた。
私の生涯は、とても寂しいものだった。
終わってみれば、ただ『幸せ』を追い求めただけの、孤独な人生だった。
行政機関によって火葬された私は、独りで土に帰った。
自我のない私は、地球の一部となった。
日に照らされ、雨に打たれ、風に吹かれ、時間だけが過ぎていった。
十年、百年、千年、一万年、一億年……。
さらに億単位の月日が流れた。
地球の環境は激変した。
全ての生物が死に絶えた。
膨張する太陽に、地球は焼き尽くされた。
夢も、希望も、笑顔も、涙も、存在も、記憶も、何もない。
さらに月日が流れ、太陽の寿命も尽きた。
地球も無くなった。
私は、宇宙の塵となった。
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