千六十四話 そろそろ本題へ
「……どうします、ソウスケさん」
「何がだ?」
ドラゴニックバレーへ向かう途中で寄った街で、二人は適当に依頼を受けようと、冒険者ギルドを訪れていた。
最初に訪れた街での噂が徐々に広まっているからか……そこまで目立った特徴がない青年と超絶美人かつスタイル抜群のエルフという組み合わせにダル絡みをしてくるバカは現れなかった。
そんな中、二人はとある話を耳にした。
「トロールという存在自体、そこら辺に生息しているモンスターではありませんが、トロールのシャーマンが確認されているそうです」
「トロールのシャーマン…………ぶっ!!」
問題……冒険者たちだけではなく、現在立ち寄った街にとっても決して無視できない問題であるのは間違いない。
ソウスケもそれは解っているが、トロールという超パワー重視のモンスターがシャーマンという上位種に進化した。
その意外性マックスの進化を想像した結果……ついでに余計なことまで思い出してしまった。
「そ、そんなに面白いイメージが浮かびましたか?」
「い、いや……確かにトロールのシャーマンっていうのは、それはそれで面白いんだけど……つい、パラディンに進化したゴブリンを思い出しちゃって」
「……そういえば、そのような個体もいましたね」
大量のゴブリンを率いた……三体の上位種がいた。
パラディン、ハイグラップラー、ウィザード。
ミレアナもその件に関しては覚えており……非常にふざけた存在だと記憶している。
エルフにとって……女性にとって、そもそもゴブリンという存在がふざけた存在であるため、ソウスケは思い出し笑いするが、ミレアナにとってはあまり笑えるような存在ではなかった。
「しかし、トロールのシャーマンか…………無茶苦茶嫌な存在、なのかな」
「トロールとしての身体能力が損なわれていなければ、確かに嫌な存在でしょうね」
シャーマンという存在に進化したということは、知能や魔力量、魔法に関する技術が向上したことを示す。
シャーマン、メイジ、ウィザードといった存在に向いていない存在が、そちらの方向に進化した場合、それは意味ある進化となるのか……これまで多くの冒険者、騎士たちが対峙してきた結果、総じて厄介な存在という結論が出ている。
向いていないが、そちらの方向に進化した、のではない。
向いているからこそ、そちらの方向に進化したのだ。
「それで、どうしますか、ソウスケさん」
「ん~~~……別に、無視しても良いかな」
「……珍しいですね」
ソウスケの答えを聞いて、ミレアナは驚きで数秒ほど固まってしまった。
「そうか? いや、確かにこれまでの行動を振り返ったら、そう思うのが普通か」
「トロールのシャーマンというのは、あまり興味が惹かれませんでしたか?」
「別にそういうことじゃないんだけど、なんて言うか……ちょっと、寄り道し過ぎてるかなって思ってさ」
三人の目的地は、ドラゴニックバレー。
勿論、グレンゼブル帝国にはドラゴニックバレー以外にも冒険者が冒険者として活躍出来る場所はある。
しかし……元々ドラゴンたちの住処、ドラゴニックバレーという場所に興味を持ち、三人はグレンゼブル帝国に足を踏み入れた。
「これまで既にちょいちょい寄り道してきたけど、そろそろね。もっと興味を惹かれる何かならともかく、トロールのシャーマンってなると……ちょっとなって思って」
「なるほど。確かに、多少ではあるが寄り道が多かったかもしれませんね」
ドラゴニックバレーがある場所までの距離を考えると、まだまだ移動することになる。
二人は予定通り適当な依頼を受け、受理してもらって冒険者ギルドから出た。
「……討伐しないのか?」
しかし、ギルドでミレアナが聞き拾った話を伝えると、ザハークは割と本気で食いついた。
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