七百二十話 マジの調味料

ダンテたちはソウスケたちが用意した食事、風呂、安眠できる時間のお陰で、翌日には今までの疲れが吹き飛んでいた。


「おはようございます、ダンテさん」


「あぁ、おはよう。ソウスケ君……君たちのお陰で、すっかり体が軽くなったよ」


「それは良かったです。強敵と戦うためには、万全な体調ではないと危ないですからね」


そう言いながら、ソウスケは亜空間の中から先日と同じく、新鮮な肉や野菜を取り出した。


「あ、あの。私たちにも手伝わせてください」


「良いんですか? ありがとうございます」


ただ料理が出来上がるまで待つというのは、さすがにソウスケたちに申し訳ないと思ったのか、ダンテたちの中で料理が出来る者たちが朝食を一緒に作ると申し出た。


「それじゃ、そこら辺の調味料は好きに使ってください」


「は、はい」


料理に参加した女性は、肉や野菜の鮮度にも驚かされたが、用意されている調味料の数にも驚かされた。


(もしかして、ソウスケ君は貴族の令息……いや、でもやっぱり違うわよね)


ダンテたちの中には、ソウスケが自分たちと同じく貴族の子供なのではと思った物が多数いた。

だが、毎度のごとくソウスケには貴族特有の雰囲気がないと判断し、自分たちとは違うと思った。


ただそれでも……ダンジョンを攻略しにきているのに、多くの調味料を揃えている……この時点で、まず普通ではないと思ってしまった。


ダンテたちも、多少は食事の際に使う調味料を用意しているが、ソウスケが所有している調味料の数と質は比べ物にならない。


「それじゃ、早速食べましょう」


全員分のおかわり分の料理も終わり、周囲に良い匂いを漂わせながら朝食を食べ始める。


先日はあまりにもお腹が空いていたので、貴族の一員らしくない食いっぷりを見せてしまったが、本日は丁寧に食べていく。

ただ、ダンジョンの中で食べていると思うと、あまりにも美味であり、おかわり分を食い尽くすまで食事の手は止まらなかった。


「な、なぁ少年。金を払うから少し料理を分けてもらえないか」


「……ちょっと待ってください」


そう言うと、ソウスケは取り出した板の上に、大量に余っているモンスターの肉と、少しの野菜、果物を乗せた。


「これからちょっと急がなければならないんで、新鮮な食材であれば渡せます」


「そ、そうか……是非買わせてくれ」


料理人ではないが、声を掛けてきた男は一目で木の板に乗せられている食材の鮮度が高いことを察し、詳しいことは聞かずに金を払った。


「毎度あり」


金貨五枚を貰い、ソウスケは木の板を亜空間に戻して席に座った。


「ソウスケ君、あれを金貨五枚で良かったのか?」


やり取りを見ていた騎士は、今までの経験からもっと交渉して多くの利益を得れたのではと思った。

確かに新鮮な野菜や果物などは、このエリアではまず摂れない。


それを考えれば、もっと金銭を要求出来たかもしれないが、ソウスケにはそれをする理由が一ミリもない。


「お金には困ってないんで、別に良いかなって」


「……はは、そうでしたね」


先日聞いたセリフをもう一度聞き、本当に器が大きい少年だと感じた。

そしてダンジョン飯にしては美味い夕食を食べ、一行は溶岩竜の捜索に向かう。


一応四十八階層まで向かい、発見出来なければ四十四階層まで戻る。

それを繰り返して溶岩竜を探す。


「それじゃ、一時間ぐらい頼んだ」


「「了解」」


固まって捜索するのは効率が悪いので、溶岩竜が過去に現れた……もしくは現れそうなエリアを手分けして探す。

最初はソウスケが護衛としてダンテたちの傍に居て、ザハークとミレアナが離れて行動し、溶岩竜を発見すれば、直ぐにソウスケたちに知らせるという流れで動く。


溶岩竜はレアなモンスターなので、そう簡単にはダンジョンに出現しないが、それでも三つに分かれて行動すれば意外と直ぐに見つかる……訳がなく、その一日はBランクのモンスターと遭遇はすれど、目的である溶岩竜を発見出来なかった。

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