七百七話 知らぬ間に上がってる
「あれ、ソウスケ君たちってEランクじゃなかったっけ?」
ようやっとクラウザーマンモスの解体が終わり、収納袋に入れ終わり……残したクラウザーマンモスの肉で腹を満たす。
「ちょっと前の話ですね」
ワードたちの記憶には、Eランクだけど初心者向けのダンジョンを速攻で攻略し、中級者向けダンジョンを何度も攻略し……何故かそこそこ質が高い武器やマジックアイテムを造る珍し過ぎるパーティーがいる、と記憶していた。
「元々Dランクへ昇格しませんかって話はギルドから来てたんですよ」
「そりゃそうだろうなら。お前らぐらい強かったら、ギルドもさっさとランク上げて色々と面倒で厄介な依頼を解決してほしいと思ってるだろ」
「ま、まぁそうなんでしょうね」
冒険者のランクが上げれば、受けられる依頼の難易度も上がる。
そして、それはギルドが受けてほしい依頼……願いも同じ。
それなりのランクがなければ、実力があっても受けてほしい願いを頼めないのだが……ソウスケは先日の件を思い出し、少し頭を捻った。
(……例外もあるってことか)
自分たちが例外過ぎる存在だということは認識していたので、もうその事について悩むのは止めた。
「それで、依頼から帰ってきたらCランクまで上げられたんですよ」
「盗賊退治、だったか……ラップたちがいれば、数が多くてもそうそうしくることはない」
「お守り役のオーザストもいたんでしょ。だったら、普通じゃない奴がいたってことね」
その普通じゃない奴について、ソウスケは特に隠すことなく伝えた。
「……そのバンディーという男は非常に運が良かったのだな」
「やっぱりそう思いますか」
「あぁ、当然だ。悪魔と契約出来るような盗賊なら、少しぐらいは名が知れ渡っている筈だ。ただ、君達と出会ってしまったことで、その運が尽きたようだな」
「それにしても、ザハーク一人で倒したとは……やはり驚きです。恐ろしくはなかったのですか?」
丁度クラウザーマンモスの肉が焼き上がり、塩胡椒が効いた肉にかぶりつく。
「…………全く、なかったな」
「そ、そうですか」
嘘を付いてるようには、見栄を張っている様には思えない。
「Aランクのモンスターであれば、既にアシュラコングと戦っている」
「ぶっ!!! ゲホ、ゴホ……ちょ、ちょっと待て。まさか一人で戦ったのか!?」
「あぁ、そうだな。ソウスケさんに頼んで一人で戦った……熱く、力と力がぶつかり合う、良い戦いだった」
今思い出すだけでも、心の奥底が熱くなる。
ザハークにとって、アシュラコングとの戦いはそんな死合いだった。
「言っておきますけど、ザハークが得意なのはパワーを活かして物理攻撃だけじゃないですよ」
「いや、話を聞く限りそれは解るけどよ……は、ははは! マジか、凄過ぎんだろお前」
「ソウスケさんと出会えたから、今の俺がある。倒せたのは、俺の力だけではない」
サラッとそんなセリフを吐かれ、ソウスケは無意識のうちに頬が赤くなっていた。
「そ、そりゃどうも。とにかく、ザハークは一度一人でAランクモンスターを倒してたんで、今回も大丈夫だと思ってたんですよ」
「死合いは、不完全燃焼で終わったがな」
「そりゃ基本的によっぽどの信頼関係がなけりゃ、自分の命が大事で逃げるでしょ。ソウスケ君はよくそこを見抜いてたね」
「……パズズをバンディーの寿命や命を気にはかけてましたけど、それでも言葉だけで気持ちが乗ってなかったというか……とりあえず、逃げられたら癪だったんで、絶対に潰す気でした」
「そんでズバっとやったわけか」
ワードはソウスケに賞賛を惜しみなく送った。
そこでパズズを殺しておかなければ、非常に後味が悪くなる。
ギルドからの依頼に関しては問題無く達成かもしれないが、依頼に参加した冒険者の気持ちは問題無くない。
「お前らなら、ここのボスもサクッと倒しそうだな」
リップサービスなんて気持ちは一寸もなく、本能的に……今までの経験的に、三人が上級者向けのダンジョンのラスボスに負けるイメージが浮かばなかった。
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