七百六話 同じエルフ?

「はぁ~~~、生き返った~~~~」


「いやぁ~~、本当にヤバかったから助かったぜ」


「ソウスケ君、本当にありがとうございます。あなたの施しがなければ、私たちは地上に生きて帰れませんでした」


「あの、皆さんが感謝してくれてるのはもう解ったんで、頭上げてください」


全員にポーションと魔力回復ポーションを渡し、ワードたちは完全回復した。


「いやいや、マジで感謝してもし足りないって感じだぜ。にしても……お仲間のエルフの確か……ミレアナさんだったか? あれ凄いな」


あれとは、モンスターの体内から水の魔力操作を応用して一気に血を引き抜く作業のこと。


「あはは、そうですね。ミレアナがあんなことを出来るお陰で、いつも解体作業が早く終わるんですよ」


「……素晴らしい魔力操作だ」


エルフであり、同じく魔法を得意とするエルはミレアナが次々にフレイムジャッカルの血を抜いていく様子に、思わず見入っていた。


(私と同じ、エルフ……エルフ?)


何やら違和感を感じたエルだが、そこで答え合わせをしようとは思わなかった。


「それじゃあ、俺がザハークと一緒に見張ってるんで、スラウザーマンモスの解体をしちゃってください」


「……何から何まですまねぇな。後でこいつの肉ご馳走するからちょっと待っててくれ」


「楽しみに待ってます」


ソウスケはその場から離れ、先程からミレアナの護衛をしていたザハークの元へと移動。


「お待たせ……ふっ、ちょっと羨ましいって顔してるな」


「そうだな……あの四人はこの階層でAランクのモンスターと遭遇できた。それを考えると、羨ましい限りだ」


「Aランクモンスターの中で、実際に見た中では一番の大きさだしな」


それなりに冒険者として多くのモンスターを見てきたソウスケだが、その中でもスラウザーマンモスはとびっきりの大きさを持っている。


「パワーとタフネスはかなり高いだろうな。でも、ザハークならスピードでかき回せるだろ」


「体の大きさなどを考えれば、赤毛のアシュラコングやパズズと同化したバンディーの方が速く、小回りが利くだろうな……だが、それは勝つ事だけに集中した動きだ」


自分よりも圧倒的な大きさを持つモンスターが相手……そうなれば、ただ自身の脚力を活かして相手の攻撃を全て躱し、チマチマと攻撃を当ててダメージを与え、時間を掛けて倒す。


そんなやり方、非常につまらない。


「悪いが、あんな敵と遭遇できたのなら……俺は楽しませてもらう」


「そうか……良いんじゃないか? てか、悪いとか全く思ってないし、よっぽどのことがない限り止めないさ」


今まで強敵と思える相手と遭遇し、ザハークが一人で挑むとき……今のところソウスケが止めたことはない。


「でも、パラデットスコーピオンの亜種? あんなのが相手だと……援護ぐらいはするかもな」


「パラデットスコーピオン…………あぁ、あれか」


ザハークが生まれたダンジョンのラスボス部屋に、偶に出現する最悪のモンスター。


(懐かしいモンスターだな。あの時よりも俺は強くなったが……確かにあの手数の多さは厄介極まりない)


ザハークも武器を振り回しながら魔法を使ったりすることは出来るが、パラデットスコーピオンの亜種は両手の挟みに三本の尾。

そして口から毒液なども吐き散らかすので、非常に手数が多い。


通常のパラデットスコーピオンがラスボスであれば、上位ランクの冒険者一パーティーでも討伐出来るかもしれないが、亜種になると話は変わってくる。


「そうだな。あぁいったモンスターが相手なら、二人の手を少し借りよう」


「そうしてくれると仲間としては安心だ」


ソウスケもあの頃より強くなった自覚があるが、パラデットスコーピオンの亜種はあまり一人で立ち向かいたくなかった。


(昆虫系全般が苦手って訳じゃないけど……うん、万が一のことを考えたらな)


なんて言い訳を考えているが、とりあえずパラデットスコーピオンの亜種に若干の苦手意識があることに変わりはなかった。

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