七百一話 量と度数を記憶
「ソウスケさん、そろそろ起きてください」
「ん……おはよう、ミレアナ」
「はい、おはようございます」
先日、宴の後にバーでラップたちとそれなりに呑んだソウスケは、記憶こそ無くしていないが、怠い感覚が少々体に残っていた。
「……ソウスケさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。顔を洗えば元通りになる」
そう言って水を生み出し、顔をバシャバシャと洗うと……そこまで呑み過ぎていなかったこともあり、元の状態へと戻った。
「もう少し寝ておかなくても大丈夫ですか?」
「もう問題無い。というか、時間を伸ばしてしまうのはザハークに申し訳ないしな」
先日の夜、ザハークはソウスケに付いていかず、ミレアナと共に宿に戻って寝ていた。
勿論既に朝食をモリモリと食べている。
本日は三十層から一気に五十層のラスボスがいる最下層まで行く予定。
一日で到着できないことぐらいは分かっているが、それでも探索時間を長くするためにいつもより早めに起こすように、ミレアナに頼んでいた。
(お酒にのまれることはなかったけど、ちょっと危なかったな……あれぐらいが限界と覚えておこう)
お酒は美味しいものだと解ったが、帰り道にちょいちょい潰れた酔っ払いを発見。
夜道で無防備に転がっているなんて、どうぞ所持品を盗んでくださいと言っている様なもの。
ソウスケであれば近づく者がいれば反応出来るかもしれないが……そうなった場合、うっかり力加減を間違えて盗人を殺してしまうかもしれない。
(酔うと判断力が鈍るらしいし……そうなった場合、気を使って近づいてきた人をうっかり吹っ飛ばしてしまうかもしれない)
ソウスケがうっかり力加減を間違えれば、仮に相手が一般人だと余裕で殺してしまう。
(うん、昨日飲んだ量とお酒の種類は覚えておこう)
お酒の度数によっても酔いやすさは変わってくるため、同じ量でもアルコール度数が高いお酒であれば、数杯で潰れてしまう可能性も大いにある。
「ソウスケさん、本日はどこまで潜りますか?」
「そうだな……三十三層。調子が良ければ三十五層ぐらいかな」
本日……つまり、一日の間に潜る階層の話をしている。
普通に考えればあの子供とエルフの女は、どれだけ馬鹿な話をしていんだと思われる。
しかし元々二人がランク不相応の力を持っている噂は流れており、先日の盗賊討伐戦で同業者たちからの評価はグッと上がった。
中にはまだギリス・アルバ―グルの様な現実を認められない愚か者もいるが、周囲から確かな実力を持っている冒険者だと認知されている。
加えて、Aランクモンスター並みの怪物を一人で倒したオーガを従魔にしていることもあり、三人で上級者向けのダンジョンを潜ろうとしていても……とりあえず、この場では「無謀過ぎる!!」と、止める者はいなかった。
「そうなると、上手くいけば四日ほどで最下層に辿り着けそうですね」
「そうなるな。でも、四十層から五十層は当たり前だけど、出現するモンスターのレベルが高くなるし、そう簡単に順調に進むのは無理だと思うけど……まぁ、急げば話は別か?」
階層を下る。
それだけに集中すれば、三人の速さを考えると短期間で最下層まで到着することが出来る。
ただ、ソウスケとしては道中で出現するモンスターの素材や、宝箱は当然欲しい。
そうなってくると、やはり最下層に到着するまでの時間は長くなる。
「四十層から五十層の間ですと、Aランクモンスターが道中で出現する確率も少し上がる様ですし……そうですね。さすがに四日で最下層に到着するのは難しいかもしれませんね」
四日で到着するのは難しいと話しながらも、最下層に到着するのが不可能だとは微塵も思っていない。
そんな自信の強さに、同じく食堂で朝食を食べている同業者たちは感心する者半分、さすがに無理じゃないかと思う者が半分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます