六百七十四話 ザハーク的に……

「ソウスケさん、参加しても良かったのか?」


「ん? ザハークは参加するのに不満か?」


「不満という訳ではないが、上級者向けのダンジョンに潜っていた方が楽しめると思ってな」


ギルド職員から、ソウスケたちに盗賊の討伐に参加してほしいと伝えられた。


最近、一つの盗賊団が数を増やし始め、それに比例するかのように戦力も増加している。


「もしかしたら、ザハークが満足する相手がいるかもしれないぞ。俺は今回、そういう相手がいたらお前に譲るつもりだ」


「ふむ……少し面白そうな話ではあったな。そこに期待しても良いか……だが、ギルドからの依頼は盗賊団の討伐に参加。その討伐作戦には、他のパーティーも参加するのだろう」


「そう言ってたな。確か……俺たちと同じDランクのパーティーが二つと、Cランクのパーティーが一つだったな」


正直なところで、その戦力で数と戦力が増加した盗賊団を倒せるのかと、心配なところはある。


(まぁ、盗賊団の連中って奇襲は得意だけど、対人戦はそこまで得意なイメージはないから……俺たちを入れれば、確か……十六人ぐらいか? それぐらいれば、ギルドも丁度良い戦力かもしれないって思てるのかもな)


大手のクランの主戦力は、現在上級者向けダンジョンに潜っている者が多く、連絡をしようにも連絡できないのが現状。


盗賊団討伐に選ばれたDランクパーティーの二組は、学術都市に在籍するDランクパーティーの中ではトップクラスの実力を持っており、Cランクへの昇格が有望視されている。


本人達も、今回の討伐戦で活躍してギルドからの評価を上げ、Cランク昇格に繋げようと考えている。


ただ、最近同じDランクになったソウスケにそんな思いは当然なく、参加するだけで金貨数十枚が懐に入るので、中々悪くない。

偶にはギルドの依頼も受けないとな……といった軽い気持ちで受けていた。


特別に同席していたザハークだけではなく、ソウスケも今回の討伐戦が命を懸けた戦いになるとは一ミリも思っていない。


ザハークはソウスケの言葉通り、もし強い盗賊がいれば熱い戦いが出来るかもしれない……と、少しだけ期待している。


(急激に戦力まで増加した……盗賊のトップが、そういったスキルを持っているのかもしれないな。だが、そうなると盗賊団のトップの実力はあまり期待できないか?)


盗賊団に限らず、組織のトップというのは例外を除いて総じて強い。

しかし、ギルドからの情報ではここ最近いきなり強くなった。


そしてその強さの源がトップである……と、推測されている。


「……やっぱり、討伐戦に参加するのは嫌か、ザハーク」


「いや、そういう訳ではない」


嫌という訳ではないが、ソウスケはバッチリ不満そうな気持が表情に現れているのを見ていた。


「ただ、トップの人間が支援系の能力をメインにしているのであれば、あまり飛び抜けて強い者はいないのでは……と、思ってな」


「ほほぅ……無きにしも非ずな可能性だな。まっ、もしそうならさっさと殺して戻って来て、上級者向けダンジョンに潜って戦闘欲を満たせば良いだけじゃないか」


「……それもそうだな。少し色々と考え過ぎていたようだ」


そう……ザハークは少し色々考え過ぎていた。


他の冒険者と同じ依頼を受けるという事は、主であるソウスケが絡まれてしまう可能性が高いのではないか……等々、もしもの可能性を考えていた。


ザハーク的には、ソウスケよりもランクが高い者には、比較的ソウスケに対して友好的な者が多い。

だが、同じランクか下のランクの者であれば、ライバル視……もしくは敵視する者が多い。


というのが、個人的な印象なのだ。


しかし、当の本人は他の冒険者と一緒に依頼を受けることに対して、全くその辺りを心配していなかった。


(俺が考えても無駄な事だな)


そう思うザハークだったが、報告を受けたミレアナも直ぐにザハークと同じ思いを抱いたのだった。

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