六百七十五話 あれ、もしや……

翌日、ギルド職員に伝えられた通り、ソウスケたちは昼過ぎに冒険者ギルドへ向かっていた。


「……二人とも、ちょっと表情が固くないか?」


「ザハークと同じ気持ちなので……少し考え込んでると言いますか」


「まぁ……俺も考えるだけ無駄かと思ったが、ソウスケさんに面倒事が降ってくると考えるとな……」


「はは、そんなに俺のこと心配してくれてるのは嬉しいけど、今回は意外となんとかなると思うぞ」


先日、ソウスケとザハーク、ミレアナが造った武器を買いに来た冒険者はCランクの冒険者や、ベテランのDランク冒険者が多かった。


店で売っていると商品と比べてかなり値段設定は低いが、それでもルーキーがランクが高い武器を買おうとすると、かなり無理をする必要がある。


そんな中、武器やポーションを買いに来た冒険者たちは非常にソウスケたちに友好的な態度だった。

買いに来た冒険者の中にはBランクの冒険者もいたが、素直にソウスケやザハークの腕を評価していた。


それだけではなく、Bランクの冒険者ともなれば経験から二人のおおよその力を把握。

無理だろうと思って声は掛けなかったが、是非とも勧誘したい……そんな気持ちを抑え込んでいた。


「ソウスケさんは気楽だな……まぁ、いざとなれば力で黙らせればいいのは解るが」


「ん~~~、他の冒険者ともなるべく仲良くしたいから、そういうのは避けたいところだけど……よっぽど俺のことが嫌いというか、認めたくなかったら……そうするしか手段はないかもな」


そんな手段を取るのは嫌だな~~と思いながらも、ソウスケの表情はあまり陰っていない。


三人があれこれ考えていると、あっという間に冒険者ギルドに到着。

ザハークは一応従魔なので外で待ち、二人はギルドの中へと入った。


(空いてそうな人は誰かな~~)


ギルドの空き部屋で集まると聞いていたので、その空き部屋がどこなのか尋ねようと暇そうな職員を探していると、ソウスケたちのことを正確に知っている職員がダッシュで向かってきた。


「そ、ソウスケさんたちですね。えっと……例の件でギルドに来た、ということでよろしいでしょうか」


「はい、そうです。なので、集まる部屋に案内してもらっても良いですか」


「えぇ、勿論です!!! 付いて来てください!!」


二人は職員のテンションの高さに若干驚いたが、ダッシュで向かってきた職員はソウスケたちのファンだったので、ソウスケと直に話せてテンションが上がっていた。


「こちらです!!」


「ありがとうございます」


テンション高めな職員と別れ、ノックをしてから集合部屋に入室。


中へ入ると、既にソウスケ以外のメンバー十三人が集まっていた。


(……あっちの五人組が、Cランクのパーティーかな)


ソウスケもある程度自分以外の冒険者を視てきたので、どの程度の強さを持つ人がどのランクぐらいなのか正確に解かるようになってきた。


「よぉ、ソウスケ君だな。んで、そっちのエルフの姉ちゃんがミレアナさんだろ」


「はい、そうです……えっと、もしかして前回露店で俺が造った武器を買ってくれましたか?」


ソウスケは自分に声を掛けてくれた人物に見覚えがあった。


「俺のこと覚えてくれてるのか!!」


「は、はい。俺が造ったそれを見てかなり驚きながら買ってくれたんで」


視線の先には、ソウスケが上級者向けダンジョンの三十層以降で手に入れた火属性のモンスターの素材をメインに使った魔剣が帯剣されていた。


「はっはっは!! そりゃこんな剣があんな値段で売られてたんだからな。そりゃ自然とテンションが上がるってもんだ! ん? そういえば、あの一緒に武器を売ってたオーガの従魔はいねぇのか?」


「一応従魔なんで外で待ってます」


「なんだよ、別に外で待ってもらう必要なんでないぜ。ここに来てもらえよ、なぁ!!」


男が仲間の方を見ると、男の仲間達は皆了承するように頷いた。


この場で場を仕切っているのは彼らのパーティーであり、ソウスケたち以外のDランク冒険者たちは無言のまま何も言わない。


「じゃ、じゃ呼んできます」


多分もんだないという事で、ソウスケは小走りでザハークを呼びに向かった。

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