六百七十二話 内緒にしようぜ

「……四人とも楽しめたみたいだな」


「「「「ッ!?」」」」


四人は声を掛けられるまで、ソウスケが近づいてきてることに全く気付かず、幸せ過ぎる余韻に浸っていた。


「あ、えっと、その……」


「何か焦って言わなくても良い。表情を見れば、四人とも楽しめたのは解る」


ソウスケが選んだ店は学術都市でトップレベルの店。

相手が誰であろうと、どんな状態であっても丁寧にもてなす。


四人がどれだけお姉さんを相手にビビッていようとも、上手くその緊張を溶かして快楽へといざなった。


「ほら、とりあえず帰るぞ」


「「「「はい!」」」」


四人にとって、今回の体験は一生ものだと感じた。

唯一婚約者がいる男子生徒も、なんだかんだでソウスケの誘いに乗って店に訪れて良かったと思っていた。


「四人とも……なんかミスせずに、上手くやれたか?」


「う、上手くやれたというか……み、ミスはしてないと思います」


「な、なんか全部お姉さんに任せてたら……なぁ」


「そ、そうですね。正直気付いたら終わってたって感覚です。あの、勿論凄い楽しめたというか、凄い体験をした記憶はあります」


「はは、分かってるって。俺も初めてはお前らと似た様な感じだったしな」


ソウスケも初めては蛇腹剣で奪ったスキルを使ったお陰で長い時間楽しめたが、終わってみればサルの様に盛っていた記憶しかない。


(もう……あれだよな、童貞感丸出しだった気がする。いや、やるまで童貞だったんだから、当たり前といえば当たり前なんだけどさ)


当時のことを思い出すと、少し恥ずかしさが蘇った。


「これで、本当に好きになった人とやる時に、焦り過ぎてミスしないだろ」


「あっ……そ、そうかもしれないっすね」


やっぱり好きな人やるなら、初めて同士が良い。

そう思う気持ちは解らなくもないが、行為中に発生してしまう失敗というのは、大体男性側の失敗となる。


もしかしたら、それが原因で軽いトラウマを抱えてしまうかもしれない。

実際にそういった事例はあるので、ソウスケとしては男は実際に好きな人と……恋人とやる前に、少しぐらいは予習をしておいても良いのではないか……と、この頃は思ったり思わなかったりしている。


「まぁ、一回だけじゃ足りないかもしれないけど……だからといって、あんまり店に行くのに夢中になるなよ。持ってる金を全部吸われるかもしれないしな」


「き、気を付けます!!!」


貴族だろうと冒険者だろうと、女関係で失敗するのは全く珍しくない。

嬢にハマるのも同じで、貴族の男性が嬢に入れ込み過ぎて人生が終了した……といった例は多くはないが、そこまで珍しい内容でもない。


「それと、今回のことは誰にも言うなよ。他の奴らに連れて行ってくださいって頼まれるのはな……それに、同級生の男に喋ったら、どうせその話は回り回って女子の耳にも届く。女子生徒たちがどういった店のことをどう思ってるのは知らないが……卒業までずっと白い目で見られるかもしれないぞ」


「「「「は、はい! 気を付けます!!」」」」


今日体験したことは、決して無駄ではないと思っている。

ソウスケには物凄く感謝しており、大変気持ち良かった。


だが、卒業まで女子たちに白い目で見られるのは……それはそれで辛い。

特に婚約者がいる男子生徒にとっては、絶対に今回の話は女子生徒側に届いてほしくない。


四人は今日体験した内容は、この先絶対に誰にも話さないと心に誓った。


「ところでさ……店に来ないかと誘った俺が言うのもあれだが、門限は大丈夫なのか? それとも全然朝帰りとかして良いのか?」


「……はっ!」


一人の男子生徒が身に着けていた懐中時計で確認すると、後二十分で門限の時間になってしまう。

歩いて戻れば絶対に間に合わない。


かといって、今が本番の歓楽街で走れば絶対に誰かとぶつかって面倒なことになる。


「その様子だと、ちょっと不味いみたいだな。とりあえず、歓楽街の外には連れてってやるよ」


「え、どうやって、うぉっ!!??」


ソウスケは四人を風の魔力で宙に浮かばせ、自身は風の魔力を応用して空中を跳ねながら歓楽街の外へと向かった。


四人はまさかの状態に混乱しており、その間に歓楽街の外へと到着。


「このまま送ってってやるよ。ほら、走った方が良いんだろ」


ソウスケの言葉でハッとなり、四人は慌てて走りながら学園に向かい、なんとか四人は門限を破らずに済んだのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る