六百四十六話 不利な場所でも

「本当に、楽しませてくれるなッ!!!!!」


炎の鉤爪、鋭い尾や炎のブレス。

これらを前にしてもザハークは一歩も引かず、勇猛果敢に挑み続ける。


一般人からすればファイヤドレイクが空から遠距離攻撃だけを行っていれば勝つのでは? と思うかもしれない。

だが、ファイヤドレイクはブレスを繰り出すたびに魔力を消費している。


魔力がゼロになれば、当然ブレスを出すことは出来ない。

それどころか、魔力切れの影響で抵抗しきれない疲れが体を襲う。


そしてソウスケたちのように魔力を回復する道具を持っていないので、離れた場所から攻撃をし続けていればいずれ自滅してしまうのだ。

加えて、ザハークはその反応速度と脚力でファイヤドレイクの遠距離攻撃を躱すことが可能。


ファイヤドレイクとて、あまり自身の魔力を無駄にしたくない。

そういった考えもあり、ファイヤドレイクは近距離攻撃と遠距離攻撃を上手く使い分けながら戦っている。


「ぜぇあああッ!!!!」


「ッ!!??」


脅威的な脚力で宙に跳び、大剣を振るうザハーク。

しかしファイヤドレイクを驚かせるが、決定打は浴びせられない。


「無茶をしますね」


「でも、大丈夫だろ」


空中を自由に動けるファイヤドレイクを相手に、宙を跳んで斬りかかる。


普通に攻撃していては中々攻撃が当たらない状況を考えれば、そうしたくなるのも無理はない。

だが、空を飛べない者が空中に跳べばファイヤドレイクからすれば格好の的。


そのまま脚で掴んでマグマの海に落とす。

もしくは尾で思いっきり弾き、マグマの海までぶっ飛ばす。


そうするだけで決着が着く。


「ふんッ!!!」


だが、ファイヤドレイクが接近しながら攻撃してくるのを読んでいたザハークは空中で体を上手く動かし、火を纏う尾に斬撃を返す。


その結果、尾を切断されてしまうことを恐れたファイヤドレイクが引く結果となった。


「見事な身のこなしですね」


「ああいった空中戦は今まで何度も行ってきたってわけじゃないと思うんだけど……まぁ、センスの問題なのかな」


ミレアナは体から風噴出させて空中でも体を動かして攻撃を回避。

ソウスケは蛇腹剣に食わせ蜘蛛系のモンスターのスキルを使用し、スパ〇ダーマンのように体から放出した糸を使って回避。


といった手段が頭に浮かんでいたが、ザハークが選んだ選択は不利な空中でも攻撃を行うだった。


(やろうと思えば出来ると思うけど、あんなに軽々やってのけるんだもんな……ファイヤドレイクも気の毒だな)


未だに両者の魔力とスタミナが切れることはなく、傍から見れば勝負は互角。


しかしソウスケとミレアナはザハークがこの戦いに負けるなど、一ミリも思っていなかった。


「ん? ……どうやらお客さんが来たみたいだな」


ザハークとファイヤドレイクの戦いを恐れて他のモンスターが近寄って来ることはない。

そう思っていたソウスケだったが、意外にも戦いを観戦していたソウスケとミレアナを狙ってフレイムコングとレッドキャンサー。


それぞれ複数体おり、完全に二人をロックオンしている。


「ソウスケさんはどちらと戦いますか?」


「そうだな……それじゃあ、フレイムコングの方で」


「分かりました。それでは私はレッドキャンサーの方を片付けます」


ミレアナは早くザハークとファイヤドレイクの戦いを観戦したいので、全力でレッドキャンサーを仕留めに掛かる。


反対に、ソウスケはザハークとファイヤドレイクとの戦いを観ていて闘争心が湧き上がってきたので、それをぶつける相手としてレッドコングは悪くなく、両拳に水の魔力を纏って殴り合いに応じた。


すると、二人が襲い掛かるモンスターに応戦し始めたタイミングで、ファイヤドレイクが今日一番の巨大火球を口から放った。


ザハークの脚力なら逃げ切れないこともないが、ここで引かないのがザハーク。

大剣に纏う水の魔力を増加させ、大剣を全力で振りぬいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る