六百三十一話 好みの契約者

「少しは骨がある奴らが増えてきたな」


「最低レベルが二十五ですからね。戯れるには丁度良いかもしれませんね」


まだまだ体力には余裕があるので、ボス部屋を出た直ぐの場所でオークの上位種を直ぐに解体し、眠気が来るまで探索を続けた。


モンスターの平均レベルは確実に上がり、ベテランでも苦戦するモンスターがチラホラと現れだした。


ザハークも少しを気を引き締めてモンスターと対峙するように戦い、一撃で急所を貫いて戦闘を終わらせていく。


「そういえばソウスケさん、地上はどうなっていますか?」


「地上って……あの馬鹿が何かやらかしていないかってことか?」


「その事です」


あの場では自分たちに逆らえばどんな目に合うか、それなりに教えたつもり。

だが、ソウスケの考えを尊重して暴行することはなく圧をぶつけるだけで終わらせた。


ギリスの傲慢さから、実際に戦えば自分たちに勝機はある。

もしくは裏の連中を使えばなんとかなるかもしれない。

そういった考えに至ってしまう可能性はあるので、生徒や轟炎流の門下生たちの安否が気になる。


「……今のところ、あいつらからは特に連絡は来てない。生徒たちにちょっかいを掛けるだけじゃなくて、俺たちを直接襲う可能性もあるかと思ってたけど……多分、それはなさそうだな」


「ソウスケさん、俺たちの移動速度は他の冒険者たちと比べて圧倒的に早い。ギリスという冒険者がどれほどの腕を、探索技術を持っているのかは知らないが、追いつくのは無理だと思うぞ」


「…………最もな考えだな。その違いが頭からすっぽ抜けてたよ。ありがとな、ザハーク」


ギルドから買い取った地図を見て、下に降りる最短距離を突っ走っている。

モンスターとの戦闘もザハークが一瞬で終わらせてしまう。


一階層から十階層までであればギリスたちも同じようなことが出来るかもしれないが、それ以降の階層になると戦闘を終わらせて最短距離で次の階層に降りる。

そんな流れでスムーズに階層を降りていくのは非常に難しい。


「まっ、何かあったら向こうから連絡してくるって。連絡がこないなら、向こうはバカな行動を起こさずに大人しくしてる……もしくはクランの連中に監視されてるのかもな」


「監視ですか……野放しにしていれば暴走しそうですし、そのような状況になっているかもしれませんね」


「仮に何か企んでたとしても、あの二人がきっちり止めてくれるって」


「……そうですね。ダンジョンに潜っている間は、あの二人のことを信じるしかありませんね」


生徒たちのことを心配しながらも三人が順調にダンジョン探索を進めている頃、レグラスとレーラは言われた通り学園の生徒たちや轟炎流の門下生たちに危害が及ばないか調べていた。


「これが人間の世界か……当たり前だが、魔界とは違うな」


本場の悪魔たちが住む世界は魔界と呼ばれており、賑やかなところもあるがその中心にはいつも闘争がある。

決して平和と呼べる世界ではない。


「それに……美味いな」


レグルスだけではなく、レーラも街の人々から姿が見えない状態で活動している。

人の姿に変化して行動することも出来るが、数が多い生徒や門下生に危険が及ばないか見張る為には素の状態でいるほうがやりやすい。


そして二人はある程度人の世界に関して理解し、屑から不意打ちをかまして金を奪い、値段分の金を置いてこっそり屋台の料理を食べている。


「この料理を食べれるだけでソウスケと契約した甲斐があるというものだ」


契約者に非常に恵まれた。

レグルスはそう確信していた。


他の悪魔がどの様な人間と契約を結んだのかはあまり知らないが、偶に同等の力を持つ……もしくは後輩の様な存在から愚痴を利かされることがる。


(それに、あいつは本当に強い。そして一緒に行動している二人も強い。まさに俺の理想の契約者だ)


レグルスとしては口だけ偉そうで実力が伴っていない屑が死ぬほど嫌いだった。

二人ともソウスケが初めての契約者では無いので、人間にはどの様な種類がいるのか知っている。


殆どの人間が気に入らない類の人間だったこともあり、無茶な契約を結ばせるかあの手この手で契約者を自滅させてきた。


(おっと、少々感情が昂り過ぎたか)


透明になってバレないように宙を浮きながら行動しているが、感情の高ぶりによって感知力に優れたタイプには魔力の微妙な現れや変化を勘付かれてしまう。


ソウスケから美味い飯を貰えないのは困るので感情を落ち着かせ、再び生徒たちの安全を見守る。

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