六百九話 対立しますか?
「ぷっ! だっさ……」
二人の会話がどう発展するの気になる物が多く、ギルド内にはある程度の静けさがあった。
だが、その会話の結果は……氷結の鋼牙に所属するギリスがこっぴどくフラれて終わった。
ミレアナの表情を見れば分かる。
強がりなどではなく、本気でギリス・アルバ―グルという男に……そして、氷結の鋼牙というクランに興味がないということに。
冒険者の中には勿体ないと思う者もいたが、氷結の鋼牙が気に入らないと思っている者だっている。
もっと言えば、ギリス・アルバ―グルという男が嫌いだと思っている者がそれなりに多い。
現在のランクはC。
このまま順調に成長し続ければ、Bランクという一流と呼べる壁を乗り越えられるかもしれない。
そして何より苗字持ち……つまり、貴族の令息なのだ。
貴族特有のそれなりに整った顔を持ち、自身もそれを理解している。
他者よりも自分の容姿の方が優れている。
故に、自然と性格がナルシストよりになってしまった。
今回の目的はミレアナのスカウト。
単純に戦力として……氷結の鋼牙の評価を上げる為に欲しい人材という思いはあった。
だが……そういうのとは別の感情で、スカウト対処が女性なら自分が相手をすれば絶対に受け入れてくれる。
そんな自信がギリスの中にはあった。
あったのだが、そんなしょうもない自信はミレアナのフルスイングで場外まで吹き飛ばされて粉々に砕かれた。
一人の冒険者が吹き出し、笑い始めたことでギルド内にはギリスの失態を笑い、嘲笑する者が増えた。
「ぐっ! き、貴様……よくもこの私に向かってそんな口を」
「あなたがどこの誰だかなんて知りません。それとも、あなたは私と喧嘩をするつもりですか? もしくは……氷結の鋼牙というクランが私と対立するのですか?」
一つのクランが一冒険者と対立する。
決して前例がない訳ではない。
有名どころのクランが一人の冒険者に、一つのパーティーに嘗められるのを良しとしない人物は少なからずいる。
「もし対立するのであれば…………私はあなた達を全力で潰します」
「「「「「ッ!!!???」」」」」
相手を威嚇するための冷気や殺気ではなく、質が本気で潰すと敵意を向けるものに変化した。
一気に変化したミレアナの圧に氷結の鋼牙の面々だけではなく、先程までギリスがフラれたことを笑っていた冒険者たちも思わず体を震わせてしまった。
冒険者たちの中にはこの空気に耐えられず、速足でギルドから出ていく者もいた。
「あぁ、因みに言っておきますが……私の仲間であるザハークは、一人でAランクのモンスターを倒します。勿論、私たちのリーダーであるソウスケさんはそれ以上の実力を持っています。私たちと対立するなら……あなた達では勝てないと思いますよ」
これは驕りではなく、純然たる事実。
ソウスケたちが仮に……本当に氷結の鋼牙と真正面からぶつかったとしても、氷結の鋼牙が勝てる可能性はゼロ。
ソウスケには純粋の己の力や高品質のマジックアイテムだけではなく、レグルスとレーラという最上級の悪魔と契約を結んでいる。
三人が直接手を出さずとも、二人だけでクランを潰す事だって出来る。
「あ、あまり調子に乗らないで貰おうか。私たちを相手に、たった三人で勝てるだと? それに言うに事を欠いて一人でAランクのモンスターを倒せる……更には子供がそれ以上の実力を持っていると? そこまでいくと滑稽過ぎるな。その話を誰が信じると?」
「……残念な人ですね。どうやら、あなたにはそれを理解するだけの力がないようですね……本当に残念な人です。そんなことを解からないのに、ここまで己の力ではなくクランの権威を借りイキり散らかすとは……口と顔だけのピエロなんですね」
まだ手を出さない……その代わりに口に寄る攻撃は全く遠慮しない。
口撃をする瞬間にミレアナの圧が和らぎ、野次馬たちは再び目の前の現状を笑う余裕を取り戻した。
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