五百八十五話 永遠に採れる

「風の魔剣をご依頼、ということで良いか?」


「は、はい。よろしくお願いします!!!」


「任せろ。受け取る時間は……明日、学校が終わったらまたここに来い。その時に渡そう」


「えっ!? そ、そんなに早くて良いんですか!」


「あぁ、鍛冶は趣味でやってるだけだから、特に何かを造るために急いでないんだ」


偶にこんな武器を造るのはありだなと思う時があるが、生徒から……ではなく、客からの依頼がきたのだ。

それを最優先にするのは当然のことだろう。


(鞘もそれらしいのを造らないとな)


材木やモンスターの角、皮や毛皮などから造ることができ、ロングソードや短剣を造る度に制作しているので造るのにそこまで時間は掛からない。


「分かりました。明日学校が終わったら直ぐに来ます!!!」


「張り切るのは良いが、慌てて転ぶなよ」


ジュリアスと別れたソウスケは素材と魔鉱石を亜空間に入れ、ザハークが作業を続ける鍛冶場へと戻った。


「休憩中か?」


「あぁ、休憩中だ。さすがに少々疲れた。そっちはあれか。生徒から依頼されたのか?」


「しっかり素材を持ってきて、風の魔剣を造ってほしいと頼まれたよ」


「ほぅ、素材を用意したのか。それは立派だな」


材料を用意せずともソウスケの空間庫には大量の素材や魔石、鉱石が入っているので金さえ用意すれば望みの物はある程度造れる。


しかし、素材をソウスケが用意する分料金は割高になるので、ソウスケとしては素材を用意した方が生徒たちの懐的に良いのでは考えていた。


「それで、直ぐに取り掛かるのか?」


「いや、今日はもう造らないよ。日も傾いてきたし、今日は切り上げようと思う」


「そうか。丁度良いタイミングだったな」


一旦鍛冶ギルドに戻って鍛冶場のカギを返し、ザハークも一緒に夕食が食べれそうな場所を探す。


「やっぱり見た目が鬼人族に近いのと、人の言葉を喋れるのが有利に働くな」


「中身は立派なオーガだがな」


鬼人族の中にはザハークの様に血の気が多い者が多数存在するので、結局のところ外見も中身もあまり大差ない。


「そういえばソウスケさん、鉱石の量はまだ大丈夫なのか?」


「まだかなり余裕はあるよ。それに、ダンジョンの宝箱からも鉱石のインゴットが手に入るし、ダンジョンに潜ってれば案外鉱石には困らないかもしれないな」


鉱石は物によって値段は当然変わるが、それなりの値段で売れることが多い。

基本的に売ってしまう者が殆どが、ソウスケはそれらを全て手元に残している。


とはいえ鍛冶を毎日続けていれば、たとえ宝箱から手に入った分があったとしても、いずれは底を尽く。


(そういえば、上級者向けのダンジョンには鉱山地帯になってる階層があった筈だよな……一旦作った武器を売り終わったら、ミレアナと合流して採掘を中心的に行うか)


地上の鉱山はいずれ鉱石が尽きて廃鉱になってしまうが、ダンジョン内の鉱山はモンスターと同じく鉱石が採掘されても時間が経てば復活する。


そこまで速いスパンで元通りにはならないが、永遠に採掘できるというのは稼ぎたい冒険者、武器を造るのに鉱石が欲しい鍛冶師などには好都合な場所。


街を治める領主も鉱石を永遠に採掘できるというだけで大きな手札になる。


「鍛冶が一段落したら、軽く上級者向けダンジョンに潜るのもありかもな」


「俺は魔石集めの為に潜っても良いぞ」


「ん~~~~~…………俺としては楽しみは取っておきたいから、ガチで潜るのは後で良いかな」


「なるほど、楽しみを取っておくのは大切だな。しかし、ソウスケさんの実力ならば三十層以降ぐらいからでなければ、ダンジョン探索に楽しみは感じないと思うぞ」


ソウスケにとっては大半のモンスター雑魚だが、本人はモンスターとの戦いにもそれなりに魅力を感じているが、ダンジョン探索じたいが楽しいと感じている。


なので、そこら辺に関しては全く問題無い。


「ザハーク。前に言ったかもしれないが、俺はダンジョンを探索することに楽しさを感じている。まぁ……ちょっぴり? ほんの少しぐらい退屈と感じる瞬間はあるかもしれないけど、探索できればそれで良いんだよ」


「……ふむ、そういえばそうだったな」


主がそう言うのであれば、これ以上は口出ししない。

ザハークとしては中級者向けであろうが上級者向けであろうが、ダンジョン内で暴れられたらそれで良いのだから。

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