五百五十六話 投げに挑戦
強敵との対戦経験を振り返っていると、途中で昼休み終了五分前になりラーテストとはそこで別れた。
(あっ、そういえばゴブリンパラディンの話をしてなかったな……でも、話したとしてもあんまり信じてくれなさそうだな)
ゴブリンという相手からの略奪、そして女性を犯すことしか考えていない魔物が聖なる騎士の名を得る。
普通に考えてあり得ないと思ってしまう。
ソウスケも初めてゴブリンパラディンを見た時は、まさかの事実に心の中で爆笑した。
(何が起こって聖騎士に進化するのか……モンスターの進化はまだまだ未解明なことが多いらしいけど、ゴブリンがパラディン……はっはっは!!!! ゴブリンには悪いけど、やっぱりあり得ない現象だと思ってしまうな)
だが、そのゴブリンパラディンと戦ったことで聖剣術のスキルを手に入れることができた。
それに関しては物凄く感謝している。
「ソウスケさん」
「おっ、ミレアナにザハーク。お疲れ様」
二人は授業が終わると同時に、動き足らない生徒に捕まって昼休みの間、生徒たちと永遠に模擬戦を繰り返していた。
「二人ともとりあえず昼飯を食べたらどうだ」
「そうします」
「確かに腹が減ったな」
ミレアナは相変わらず一人前、適量を注文。
そしてザハークは昼休みの間も模擬戦を行い続けたことでいつもより腹が減り、七人前ほどのメニューを頼んだ。
「ラーテストとは何を話されていたのですか」
「俺たちが今まで戦ってきた強敵についてでだ」
「強敵、ですか……コボルトキングやパラデットスコーピオンの上位種などですね」
「そう、そいつらだ。ゴブリンパラディンに関しては話す前に昼休み終了五分前になったけどな」
「ゴブリンパラディンですか……強さは本物だと思いますが、奇妙なモンスターでしたね」
大量のゴブリンを率いてソウスケたちに襲い掛かったゴブリンパラディン、ウィザード、プログラップラー。
三体の強さはミレアナとザハークも認めるほどのものだったが、ミレアナは未だに何故ゴブリンがパラディンという種に進化できたのか謎に感じていた。
「俺も同じ事を考えてたよ。ゴブリンがパラディンって……はっはっは!!! やっぱり笑っちゃうわ。ザハークとしてはどうなんだ? やっぱりパラディンに進化するのは普通なのか?」
「う~~む……普通、ではないと思うな。何かしら心の変化があったか……もしくは性欲を戦闘欲が上回ったか……とにかく、何かしらの変化が起こったのは確かだろう」
「同じ種だったザハークでも明確に分からないとなれば、もうパラディンに至った本人にしか解らない変化ですね」
「そうだな。それで、そっちはどうだった?」
「どうだったと言われましても……ずっと模擬戦を繰り返していただけですよ」
二十人近くがミレアナとザハークに何度も勝負を挑むが、一発も有効打を与えることが出来ずに終了。
何が駄目だったのか、反省を繰り返しながら模擬戦に挑むが、昼休み終了五分前になるまで誰一人として有効打を与えられずに終わった。
(全く、午後も授業があるのだから昼食を食べる時間ぐらいは残せば良いものを)
結局二人に模擬戦を頼み込んだ全員は時間一杯まで二人に挑み続け、昼食を食べずに午後の授業に突入した。
「貴族や平民関係無く、どいつもこいつも根性があったな。楽しい戦いではないが、悪くない時間だった」
「それは良かった。でも、つい熱くなってやり過ぎたりしてないか?」
授業の中で行われる模擬戦ではなく、昼休み中の模擬戦。
保険医が直ぐ傍にいる状況ではない。
そんな中でザハークがうっかり強烈な一撃を繰り出してしまったら、よろしくない事態に発展してしまう。
「安心してくれ。その辺りは気を付けて攻撃している。あと、昼間の模擬戦ではソウスケさんから教わった投げを中心にして攻撃している」
「投げって……そうか、上手くいってるなら良いけど」
ソウスケがザハークに軽く教えたのは柔道の様な投げではなく、合気に近い投げ。
身体能力に関してソウスケが地球人だった頃と比べ、遥かに上回っているので出来ない技ではない。
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