五百十八話 更に恥をかくか否か
「……えっと、どういう流れでこうなったん?」
ザハークと模擬戦を行い、良い汗を流したソウスケ達は夕方になる前に街へと戻っていた。
そして泊っている宿に戻る途中、ミレアナを発見した。
だが……その傍には二人ほど腹を抱えながら蹲っている男子学生がいた。
「この学生たちがしつこくナンパしてきたので、最初は言葉で断りました。ですがあまりにしつこく声を掛けてきたので、少々馬鹿にする発言を返したら襲い掛かろうとしてきたので、返り討ちにしました」
「なるほど……まっ、やっぱりそういう流れだよな」
一応確認として聞いたが、予想通りの答えが返ってきた。
(ミレアナをナンパして、断られたのにしつこく続けたという事は、相手の力量を全く読めない実力不足って訳だな)
公衆の面前で恥ずかしい姿を見せているのは少々可哀そうに思うが、同情する気にはならない。
「お、俺達にこんなことして、どうなるか分かってんのか!!!」
「そのような情けない姿で言われても……せめて芋虫の様に転がらず、立ってそのようなセリフを吐いた方がよろしいのでわ?」
自然と吐かれた毒を含んだ言葉を聞いた周囲の人々から笑いの声が漏れる。
だが、ミレアナとしても本当にどうなるのかが分からない。
(この子供達からは特に才気や圧が感じられない……所詮親の権力で、学校の権力でどうこうしようとするのでしょうけど……それぐらいであれば、特に問題はないでしょう)
腹を痛めている子供からは高貴さも感じられず、必然的にあまり教育がなっていないと判断出来る。
傍にいるソウスケは別に大した問題にはならないと思っていた。
「俺達はアレアス学院の生徒だぞ!!! 絶対に……絶対に後悔させてやるッ!!!!」
「アレアス学院……あぁ~~~、あそこか……まっ、自由にしたら。これだけ公衆の面前で恥かいているのに、まだ恥をかく勇気があるならな」
ソウスケ達の周囲にはナンパ小僧たちと同じ制服を着ている者や、違う制服を着ている者がいるので、二人のどのような話が出回るかはソウスケ達にも分からない。
(事実が広まるのか、嘘が広まるのか……それとも事実が誇張されて広がるのか……どっちにしても大きな問題にはならないな)
アレアス学院、そこにソウスケ達の名前が届いたとしても、学園は三人に何かをしようとはしないとソウスケは確信している。
「ほら、さっさとどっか行け」
全く自分達の発言にビビっている様に見えない三人を睨み付け、その場から去って行った。
「……ソウスケさん以外の男は基本的に面倒な人ばかりですね」
「おい、その発言は止めろ。大多数の真面目に働いてる人達に失礼だ。強いて言うなら……俺達に関わってくる男の大半が面倒、だな」
世の中の男の殆どが面倒だというのは流石に失礼。
ソウスケも自身が他人から見れば面倒と思われてるかもしれない、と偶に考える。
「そうですね……確かに大半の人が真面目に働いてますね。それで……明日はどうしますか?」
「あの顔だと本当に学園に連絡してそうだが、寧ろこっちが謝罪されそうだが……とりあえずいつも通り、ダンジョンに潜ってサクッと下まで潜ろう」
大きな問題にはならない。
それはおおよそ解っているので、特に焦る必要はない。
しかしまだ中級者向けのダンジョンをクリアしていないので、先にそちらをクリアしておきたい。
「地上に戻ったら交渉が始まるのか?」
「交渉というか……多分謝ってくると思うけどな。それに、実家の方も俺達が何を倒したのかしれば、普通は謝罪の手紙とか送られてきそうだけどな」
「なるほど……まぁ、向こうが強きに攻めてきたとしても、その場で軽く脅せば問題無いだろ」
「こらこら、あんまり物騒なことを言うな……時と場合に寄るけどな」
ある程度の強者であっても、三人には殺せるだけの力は確かに有る。
しかしそれを正面から行うのは後々、更に面倒なことに繋がってしまう。
だが、ソウスケに最恐の切り札が残っているので、その辺りの心配をする必要は全くない。
三人は普段と変わらない表情で宿へと戻り、美味い夕食を食べて明日に備えて寝た。
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