五百十五話 根性だけはあった
ダンジョンから地上に戻ってきた翌日、ソウスケは久しぶりに街の外に出て体を動かすことにした。
「ダンジョンの中で模擬戦するのは駄目なのか?」
「他の冒険者に被害が及ぶかもしれないだろ。街の外でも同じだろうけど、こっちの方が被害は少ない筈だ」
ザハークと模擬戦を行うと決めていたので、誰も周囲にいないのを確認してからザハークを軽く打撃戦を行う……筈だった。
「よっと……どうやらお客さんが来たみたいだな」
「そのようだな」
当然飛んできた弓を全く慌てることなく素手でキャッチしたソウスケ。
そして弓が飛んできた方向に気配感知を集中させれば、複数人の気配を感じ取れた。
自分が放った弓を素手で捕まえた対象に驚きはするが、盗賊達の数は五人。
数の力で押せば何とかなるだろうと思っていた。
確かに数の力は脅威となるが……それは質がかけ離れていなければの話だ。
「ザハーク、一人は生かしておけ」
「アジトの場所を聞きだすのだな。了解した」
そして盗賊達が襲い掛かろうとする前に二人の方から距離を詰める。
まさかの反撃に戸惑うも、それはそれで好都合だと思い、武器を構えた。
構えたまでは良かったが……五人のうちの四人は呆気なくあの世へと旅立った。
「えっ……はっ!? ど、どういうことだよ!!!」
「見ての通りだ。お前の仲間は死んだ……それで、なんでお前を生かしたか解るか? アジトの場所を教えて貰うためだ」
「ふ、ふざけんな!!!! 仲間を売る訳ないだろ!!!!」
「へぇ~、それは珍しいな」
ソウスケとしては盗賊なら仲間を売ってでも生き残りたいと考えている。
そういう印象が強いが、目の前の盗賊はどうやらまともな仲間意識を持っていた。
「あまり時間を掛けさせるな」
「ギャアアアアアアッ!!!!????」
めんどくさそうな表情でザハークは男の脚を踏み折った。
当然、男は激痛によって悲鳴を上げる。
しかしそれでもアジトの場所を喋ろうとはしなかった。
(それだけ根性があるならまともな仕事に就けると思うんだけどなぁ……まっ、俺がそんなこと考えてもしょうがないよな)
そもそも正しい情報を引き出せても盗賊は全て殺すつもりだ。
「足の骨を折られても仲間の居場所は吐かない……大した感情だな。でもな、情報はお前の口から聞かなくても良いんだよ」
盗賊の額に手を当てて無理矢理記憶を探り始める。
「あっ、が……ぐっ」
脳みそをぐちゃぐちゃに弄られている様な激痛が体を走り、失神して痛みで目を覚ますというのを何度も繰り返す。
そして数時間前まではアジトの中にいたので情報は直ぐに手に入った。
「どうやらここからそう遠くない場所にあるみたいだな」
「そうか、それならもうこいつは用済みという訳だな」
「そういうことだ」
もう生かしておく必要はないので、ザハークは首を掴んてボキっと骨を折って絶命させた。
「……あそこまで根性があるならば、普通の職に就けたのではないか?」
「俺もそう思った……でも、仲間思いだけど他人から何かを奪って楽に生活したいっていう気持ちが強かったのかもな」
根性はあるが、根っこが捻じ曲がっていた。
仮にそうであれば一般的な職に就いて生活するのは無理だっただろう。
「芯の部分は腐っていたという訳か……さて、さっさとアジトを潰してしまおう」
「そうだな」
盗賊の死体は軽く地面を掘って埋め、調べた記憶通りに走ると直ぐにアジトへと辿り着いた。
だが、男の悲鳴がアジトまで届いていたこともあって、入り口の前には多数の盗賊が現れていた。
「むっ、脚を踏みつけるべきではなかったか」
「いや、情報の得方としては間違ってないよ。それに……あれぐらいの奴らならどうとでもなるでしょ」
「それもそうだな。なるべく逃がさないように……スピード重視で倒せば良いんだよな」
「そんな感じで頼む」
盗賊団を壊滅する場合、逃がしてしまうと他の同業者や村に迷惑を掛けるかもしれないので、潰すなら全滅が好ましい。
それを二人共理解している。
そして作戦などなく、真正面から盗賊団を潰しに掛かった。
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