四百九十五話 その総資金額は……
「ソウスケさん、一応初心者用のダンジョンをクリアしましたが、明日は休養日にしますか?」
「明日か……どうしようか」
普段ならダンジョンから戻った日は一日丸々休んでいる。
だが、今回のダンジョン探索ではハッキリ言って全く疲れていない。
なんならこれから中級者向けのダンジョンに潜っても平気だと思えるぐらい、体力が有り余っている。
(正直なところ、俺もザハークと同じで少し体を動かしたいなって気持ちはある)
ダンジョン内でもザハークとの模擬戦で多少体を動かしていたが、やはり自分に敵意のある相手と戦ってこそ満足感がある。
「……とりあえず明日はギルドに行ってみよう。そこで面白そうな依頼があれば受ける。なかったらそのまま中級者向けのダンジョンに潜ろう」
最近はギルドの依頼を受けていなかったので、ここらで少しクエストの成功回数を重ねておくのもありと判断。
ランクを上げようという気持ちはサラサラないが、あまりな長い間クエストを受けていなければ、それはそれで不信感を持たれる。
「面白そうな依頼、か……まぁ、偶にはギルドの依頼を受けるのをありというところか」
「ソウスケさんは冒険者が本業ですからね。あまりギルドの依頼を受けていなければ、どの様に生活しているのかと疑われてしまうのでしょう」
ギルドを介さずに取引をすることは禁じられてはいない。
だが、度が過ぎると流石に冒険者ギルドも黙ってはいない。
最悪の場合、ギルドカードを没収されてしまう可能性もある。
そうなれば街が管理しているダンジョンに入れなくなってしまう。
身分証明書に関しては商人用のギルドカードがあるので問題はないが、ダンジョンに潜れないのはソウスケ達にとって大きな痛手となる。
主にソウスケの冒険心やザハークの戦闘欲が満たされなくなってしまう。
「金に関してはあれを売ってるから全然大丈夫だけどな」
エアーホッケーとモンスターの木製人形。
これら二つはソウスケの大き過ぎる収入源。
冒険者の中で副業をしているものは少ないが、全くのゼロという訳ではない。
だが、ソウスケが副業で稼いでいる額は他のどの冒険者よりも多い。
多くの者は何故そちらも本業にしないのかと思うだろう。
「というか、圧倒的な実力があるのにも関わらず何故ランクアップしないのか……それだけで既に色々疑われているのではないか?」
ザハークの鋭いツッコミにソウスケは思わず言葉を詰まらせる。
「ッ……ま、まぁそれについては一旦置いておこう。ランクアップするのはいつでも良いんだ。焦る必要は無い、全くない」
世の冒険者はランクアップを目標に活動している者が大半だというのに、この男だけはそこに興味を持たない。
「お金に関しては数えきれないほどある。それはソウスケさんにとってランクアップを望まない大きな要因ですね」
「確かに金があれば美味い飯を食べられ、興味がある武器を即決で買えるな」
ザハークはソウスケが大量の金を持っているのは知っているが、正確にどの程度の金額を有しているのかは知らない。
しかしミレアナはある程度ソウスケの貯金額を把握している。
(いずれソウスケさんの総資金額は中堅貴族の総資金よりも多くなるかもしれませんね)
色々と情報を仕入れているミレアナは貴族の懐事情に関しては把握していた。
一人の冒険者の総資金が中堅貴族の総資金と同じに……普通ならあり得ない結果だ。
だが、ソウスケが造るエアーホッケー一台の値段がアホ程高いのだ。
しかし買う客はこれからまだまだ多くなる。
貴族にしろ商人にしろ……それを買うだけで娯楽が手に入り、買う店によっては集客力アップになる。
それにプラスしてソウスケはチェスとリバーシの特許も持っている。
その二つの値段はそこまで高くないが、エアーホッケーと比べて圧倒的な販売数を誇る。
モンスターの人形に関しては完全に予約制。
というか、これに関してはソウスケが目にしたことがあるモンスターでなければ作れない可能性がある。
そして最後に……ソウスケは鍛冶の腕前もプロ級。
以前露店で売ったソウスケとザハークの装備は飛ぶように売れた。
(どう考えても、冒険者の歴史の中で過去一番に副業に特化している人でしょう)
錬金術で造りだすマジックアイテムを売ればもっと金が手に入るのだが、それは気に入った者にしか売らないと決めていた。
新作、過去に仲間を失った男は支える冒険者を目指し、超一級サポーターとなる、も是非読んでみてください。
よろしくお願いします!!!
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