四百八十八話 普通に戦えば問題無い
「はぁ~~……ゆっくり寝たな」
いつも通りぐっすりと寝ていたソウスケはベッドからのそっと降りる。
「さて、朝ご飯を食べてギルドに行かないとな」
「ソウスケさん、起きてますか?」
「あぁ、今起きた、直ぐ行くから待っててくれ」
「かしこまりました」
水で顔を洗い、寝間着から普段着に着替えたソウスケは直ぐに部屋から出てミレアナと一緒に食堂まで降りる。
そして朝食をウェイトレスに頼み、料理がやってくるの待つ。
「……なんとなくだけ、そこそこ長い期間この街にいそうな気がする」
「ダンジョンが三つもありますからね。それに、ソウスケさんの名が広まれば塾や学園から依頼が来るかもしれませんよ」
「塾や学園から? 生徒達にダンジョンに潜るから護衛として付いて来て欲しいって感じの依頼か?」
「それもあると思いますが、指導系の依頼が来ると思われます。私達三人の実力はハッキリ言って異常ですからね。学園が生徒の事を真剣に考えているならば、本当の強者との戦いは必須だと思うはずです」
案にそれは自分達が本当の強者だと発言しているのと同義。
ソウスケは自分が並以上に強いというのは解っているが、自ら強者だと名乗るのは少々恥ずかしく感じる。
ただ、ミレアナとザハークに関してはそういった恥ずかしさを全く持っていなかった。
「学生の相手、か……ザハークの場合は需要がありそうだな」
「どうしてですか?」
「命の危険がなくモンスターと戦えるなんて、貴重な体験だろ」
「なるほど、確かにザハーク並みの実力を持つモンスターと訓練を行えるのは確かに貴重な体験ですね。ダンジョン内や森の中で遭遇したら瞬殺されて終わりですからね」
遭遇された瞬間に殺されてしまう。
そう断言してしまうミレアナだが、それは事実だ。
学生の中には才能に溢れ、磨かれたセンスを持つ強者はいるだろう。
ただ、それでもザハークを超える実力を持つ学生がこの世にいるのか……それは否だ。
歴史を遡ってもそんな学生の域を遥かに超えた……超越した実力を持つ者はいない。
その学生が十年ほど実戦経験を積み、訓練を続けていたのであれば勝てる可能性はあるだろう。
それでも学生のうちに勝つことは不可能だ。
「まっ、オーガは基本好戦的な性格の持ち主だからな。にしても指導系の依頼、ねぇ……ミレアナやザハークはともかく、俺は完全に嘗められるだろうな」
ソウスケの年齢は学生達と殆ど変わらない。
そして見た目も一般的であるため、何も知らない学生達からすれば本当に強いのか不思議に思っても仕方が無い。
「そういった生徒がいれば、私とザハークが潰しますので問題無いでしょう」
「いやいやいや、指導しに来てるんだから潰したら駄目だって」
「むっ……それもそうですね。では、やはりソウスケさんが軽く指導してぶっ飛ばすのが一番でしょうか」
「ぶっ飛ばすのもちょっと良く無い気がするけど……普通に考えて、レベル差から俺に勝てる学生はいないだろうな」
スキルや技術の差ではなく、単純な身体能力の差。
その差は広く、冒険者として多くのモンスターと戦ってきたソウスケのレベルまで到達している学生も……世の中にはいない。
「普通に戦えば普通に勝てる。それだけで……いや、その戦い方の方が学生達に差を解らせることが出来るかもな……でも、そういうのは本当に依頼が来たらの話だ。自分達からそういった依頼を受けようとは思わないな」
「それで宜しいかと。目的はダンジョンですからね。やはり初心者用のダンジョンから攻略していきますか」
「……そうだな。上級者用のダンジョンから攻略を始めても良いけど、そんなダンジョンを攻略した後に初心者用のダンジョンを攻略しても面白く無いだろうしな」
ソウスケ達ならいきなり上級者用のダンジョンを攻略することも不可能では無い。
ただ、ソウスケとしてはお楽しみは最後に取っておきたい派だった。
その考えにはミレアナだけではなく、ザハークも賛成だった。
「お持たせしました!!!」
食欲を引き出す朝食がやって来たところで一旦話をやめ、二人は朝食を食べ始めた。
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