四百八十話 レポート完成
「ってぇ……そうだ、アシュラコングはどうなったんだっ!!」
漁夫の利を狙おうとアシュラコングとザハークの戦いを離れた位置から観ていた冒険者達はある衝撃で吹き飛ばされていた。
炎の鉄槌と水龍の衝突によって発生した衝撃と水蒸気爆発。
その衝撃にソウスケの用に短時間で衝撃に備えられた者はおらず、もれなく全員吹き飛ばされて少しの間気絶していた。
複数のパーティーが戦いの場に急いで戻るが……その場には既にアシュラコングの姿もザハークの姿も無かった。
「おい……どういうことだよ。アシュラコングとあの馬鹿みたいに強いオーガもいねぇじゃねぇか」
「俺だって解んねぇよ!!」
「もしかしたら、ここから移動してまだ戦ってるのかも」
各々思考を巡らせ、その結果まだアシュラコングは生きていると判断して各自探索を再開する。
アシュラコングは既に体力を消耗しており、傷も負っている。
それならAランクのモンスターでも自分達で倒せるかもしれない。
あの戦いを観ていた冒険者達は皆そう思っていた。
だが……現実は虚しく、アシュラコングはあの瞬間にザハークに首を切断されており、既に綺麗に解体されていた。
「こんな所か。にしても、血を入れるケースがもう殆ど残っていないな」
錬金術が趣味であるソウスケにとってモンスターの血も大切な材料。
Aランクのモンスターの血ともなればその価値は底知れない。
人によっては骨や魔石よりも価値があると断言する者もいる。
因みにその肉は美味い……美味いのだが、珍味の部類に入る。
大半の人は美味いと感じる味だが、少々クセがある。
なので人によっては不味いと感じたり、口に合わないケースも少なくない。
(Aランクのモンスターの魔石に骨……良い武器が造れそうだな。毛皮は……そっちをどうするかは一旦保留だな)
解体を終えたソウスケは素材をアイテムボックスにしまい始める。
だが、血の入ったビンを二つと肉と骨を少々残し、リアス達に渡した。
「はい、これでレポートは完成するだろ」
「……えっ!? その……私達とは有難いのですが、本当に良いのですか?」
血と肉と骨を少々だが、その少々だけでも売れば今回リアス達がソウスケ達を雇った金額よりも遥かに高い金額を得られる。
(金には困って無いし、そもそもリアス達がミレアナと絡まなかったら珍しいモンスターの存在をしらないままだったかもしれないからな)
三人と出会った事でアシュラコングの存在を知り、討伐して素材や魔石を手に入れることが出来た。
(この街には指名依頼で頼まれたルージュバード目当てで来てたからなぁ……本当に三人には感謝だ。いや、三人を助けたミレアナにも感謝だ)
これに三人からの依頼を完全に終えたソウスケ達は街へと戻り、まずはギルドへと報告。
しかし口で報告することは無く、詳細を書いた紙をギルド職員に渡した。
すると詳しい話を聞きたいと言われ、ソウスケだけギルドマスターの部屋へと向かう。
(ギルド内にはあんまり人はいなかったし、怪しまれることは無いだろう)
なんて思いながらギルドマスターが普段働いている部屋へと入る。
「おう、お前さんが火山付近に生息していた珍しいモンスターを倒してくれたのか」
「……俺ではなく、俺の従魔。ですよ」
職員に促されるままにソファーに腰を下ろす。
ギルドマスターは四十代半ばのダンディーとワイルドが混ざったような容姿の男。
ソウスケは一目でギルドマスターが元戦闘職だということが解った。
(まぁまぁ強そうだな……鑑定使ったらバレそうだから視るのは止めとこう)
バレる者にはバレてしまうので鑑定は使わなかったが、少なくともBランクより上の実力を持っていると感じた。
「確か……オーガの希少種だったが」
「そうです」
「オーガ希少種かぁ~、俺が今まで視たことが無かったからあれだが、相当強いんだろうな。アシュラコングを倒したぐらいだし」
ギルドマスターはソウスケからの報告を疑っているわけではないが、ソウスケ達の冒険者としての実績は実際のところ大したことはない。
なので例えオーガの希少種を従えたとしても、アシュラコングを倒したという話は半信半疑であった。
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