四百八十一話 証明
(この人、ザハークが一人でアシュラコングを倒したのを疑ってそうだな)
なんとなくという曖昧な感覚ではあるが、ソウスケはギルドマスターがザハークの功績を疑っていると感じた。
ギルドマスターのポーカーフェイスは完璧ではあり、ソウスケの様な騙し合いの素人には何を考えているのか見破られない。
ただ、自分がまだEらんくということもあって、例え高ランクのモンスターを倒したのが従魔であっても直ぐに信用出来ない内容だ。
「これがアシュラコングの魔石と毛皮です。あと血が入ったビンです」
「ッ……」
ソウスケがサラッと証拠を出したことに驚くギルドマスター。
証拠を自ら出すという事は、嘘だとバレたら取り返しのつかない状況に追い込まれるのと同じ。
ソウスケと同じく鑑定のスキルを持っているギルドマスターは出された三つを調べた。
すると直ぐにアシュラコングの素材であることが分かった。
「……どうやら本物の様だな。お前、本当にEランクの冒険者か?」
「正真正銘Eランクの冒険者ですよ。先程言った通り、俺の従魔であるザハークはオーガの希少種です」
「それは解っている。だが、お前もランク相応の実力では無いだろ。上手く隠せてはいるが、解る者には解る」
実力者であるギルドマスターにはソウスケが自身の力を隠していることが本能的に解った。
もちろん、鑑定のスキルは使っていない。
いくらギルドマスターであっても、ギルドに所属する冒険者のステータスを安易に視ることは許されない。
「そうですか。でも、俺がEランクの冒険者であることに変わりはないですよ」
「それはそうだろうな……なぁ、昇格試験を受ける気はあるか」
「Dランクへの昇格試験ですか?」
「そうだ。勿論お前の仲間であるエルフの姉ちゃんも一緒だ。俺としてはCランクに飛んでも良いと思うんだが……お前は騒がれるのが嫌いなタイプだろ」
「はい、あんまり好ましくはないですね」
冒険者時代にそういった人物と何人か出会ったことがあるギルドマスターはそいつらの雰囲気とソウスケの雰囲気が似ていると思った。
そして案の定、ソウスケは騒がれることを嫌う。
「お前らの実力を考えれば確実に受かる……てか、出来レースになるな」
「出来レース……それはどういう意味ですか」
「確約出来るんだよ。お前とエルフの姉ちゃんがDランクに上がるのを。ただ、他の冒険者達を納得させるために一応試験を受けて貰うって訳だ」
「……確約になる理由はなんですか?」
「そんなの決まってるだろ。目の前のこれが要因だ」
ギルドマスターはテーブルに置かれているアシュラコングの魔石、毛皮、血の入ったビンを指す。
「言っておきますけど、これは本当の俺の従魔が一人でアシュラコングを倒した結果ですよ」
「解ってる、それはもう信用した。けどな、そんなに強い従魔を従える人間がDランク以下の実力って事は基本的にあり得ねぇんだよ」
例外はある。ポ〇モ〇の様な友情ゲットみたいな例は確かにある。
だが、モンスターとは実力主義だ。
戦いで負けた者に従うか、殺されるか。
その二択しかしない。
「治癒能力に特化している場合もあるけど……お前さんはそういうタイプじゃ無いだろ」
「そうですね」
回復魔法が使えないことも無いが、得意なジャンルは戦闘だ。
その次の趣味の錬金術や鍛冶、そして回復魔法といったところ。
「それで……どうする」
「……今回は止めておこうと思います」
「どうしてだ? やっぱりランクとか権力的な部分には興味が無いからか」
「いえ、そういう訳ではないんですよ」
寧ろ自分が持っている能力を考えると、いざという時に守ってくれる後ろ盾が欲しい。
だが、冒険者のランクに関しては向こうから面倒が寄ってくる場合が多い。
「俺ってこんな見た目なんで、それだけで下に見てくる奴が多いと思うんですよ」
「む……それは否定出来ないな」
まだ見た目的にはなよっとした部分が抜けていない。
そこがソウスケの悩みの種。
「それに俺はまだ冒険者になって一年も経っていないんで、同じルーキーとも関係が悪化しそうなんで」
「そう、だな……全員が黒い感情を持っている訳ではないが、お前さんが心配するような輩が現れるのも必然か」
残念ながら必然なのだ。
そもそも、ソウスケはミレアナという超絶美人とザハークという見るからに強そうな従魔と一緒に行動しているので、それだけでも嫉妬の対象になる。
「分った。とりあえず火山付近に生息していた珍しいモンスターの件に関してはこっちでやっておく。時間を取らせて悪かったな」
「いえいえ、こちらこそ面倒を押し付けてすみませんでした」
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