四百七十八話 負担が大きい

「ッ! 地震、か?」


「……ソウスケさん、地中のマグマの動きが異常だと」


空間感知を使用し、直ぐに地面の下を調べるとマグマがアシュラコングに向かって動いている事が解った。


「ソウスケさん、もしかしてアシュラコングは周囲のマグマを操っているのでしょうか?」


「そう、かもしれないな。アシュラコングがこの地に留まり続けたことで毛の色が変色し、火の力を手に入れた。そしてその影響もあって、この火山のマグマなら操れる……って可能性はあるかもな」


自分達が全く知らなかった情報を知り、再びリアス達の筆が走る。


「にしても、最初から使わずに最後の最後で使うってことは……結構負担が大きいのかもな」


「私の様な存在であればそこまで体に負担はありませんが、そうでない種族が自然の力を利用しようとすれば、相当な負荷が掛かるかと」


エルフやハイ・エルフは精霊の力を介して自然の力を借りれるので消費するのは魔力だけで済む。

しかし、他の種族やモンスターは精霊に好かれていなければ消費する魔力の量は莫大であり、同時に体力も消費する。


(確かマグマの温度は大体八百から千二百ぐらいだったか? 本気で熱いというか溶けるよな……相手が周辺のマグマを使ってるんだし、こっちだってちょっとズルしても良いよな)


「ソウスケさん、私の魔力の支配権を渡します」


ソウスケと同じ事を考えていたミレアナは即座に大量の水を生み出し、ソウスケに渡す。


「おう。それじゃ、俺の水と混ぜて……ザハーク! これを渡すぞっ!!!」


主から渡された援護に対し、本来ならば自分の力で決着を着けるというのがザハークの考えだが、相手も自然の力を借りているので遠慮なく二人からの援護を受け取った。


「さて、そろそろ決着を着けようか」


ザハークが二人からの援護を受け取った瞬間、右手の甲に記されていた印が一瞬だけ光り輝く。

その瞬間をソウスケは見逃していなかった。


(あれは……やっぱりあれは痣とかでは無く、紋章とかそういう類なのか? 光った色は青……ザハークの得意な魔法は水であり、俺達も援護する為に生み出した水を渡した。何か関係しているとすれば……やっぱり水龍の蒼剣か)


その考えは正しく、神からのギフトとして多種の魔法スキルを流石ったソウスケにとって属性魔法に得手不得手は無い。

なので、水魔法に関して特別才能があってセンスもあるという訳では無い。


そしてザハークに関しては希少種ではあるが、水魔法が得意では無かった。


「……ザハークが放つ技も相当ヤバいとは思うが、アシュラコングの最後の技も相当ヤバそうだな」


Aランクモンスターの名は伊達では無く、マグマを利用したアシュラコングは一度六つの巨大なハンマーを作り出し、そして六つのマグマのハンマーを一つに纏めた。


「あ、あんな物が火山に直撃したら、ぶっ壊れないか?」


「どうでしょうか……地面を抉って中のマグマが流れ出すという可能性はありそうですね」


既にアシュラコングが無理矢理地中からマグマを引き出した穴からマグマがちょろちょろ漏れている。

                           

「ザハークが何とか相殺するとは思うけど……うん、普通にヤバい程の高威力だよな」


「そうですね、ヤバい程の高威力かと」


アシュラコングが作り出した炎の鉄槌を見たリアス達の足は生まれたての小鹿の様に震えていた。


(よくあんなに足が震えているのに立っていられるな)


ただ、リアス達ほどの実力しかなければ、目の前の光景に圧倒されて震えるのも仕方が無い。

目の前には炎の鉄槌だけではなく、激流のドラゴンまでいるのだから。


「ミレアナ、衝撃に備えるぞ」


「畏まりました」


結界のスキルだけでは耐えられないと判断し、水の壁を何重にも生み出して完全防御で衝撃に備える。

そしてソウスケは万が一を想定して即座に岩の壁を生み出さるように準備していた。


二体の攻撃準備は完全に整い……後は自身の全力を放つのみ。

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