四百十七話 その黒い話は事実

「どうだ、スキルはちゃんと得られた?」


「……はい、硬化と土魔法のスキルを得ることが出来ました」


二つのスキル書を読み終え、硬化と土魔法のスキルを得たグランはそれを確かめる様に体の一部を実際に堅くし、小石を生み出す。


(……凄い、これがスキル書の力。確かにこんな簡単にスキルを得られるなら皆大金を出してでも欲しいと思う筈だ。ただ、それを簡単にあったばかり俺になんとなくって理由で渡すソウスケさんって・・・・・・本当に何者なんだろう?)


なんとなくという理由であっても、自分にスキル書をくれた事には感謝している。

しかし、自分と同じEランクではその場で利益を得られない限り、誰かにスキル書を渡す様な非常識な真似はしない。


だがソウスケは一般的な……いや、一般的でない冒険者からみても異質な存在。

ソウスケ自身の強さもそうだが、仲間であるミレアナとザハークの実力も周りと比べれば圧倒的に高い。


そして全員に戦闘において得意な部分があるのは勿論のことだが、全員がそこそこ威力の高い近・遠距離攻撃を放てる。

上に行けば行くほど極めて一点に特化しているか、ある程度苦手な事も行える冒険者が増えてくるが、ソウスケ達程早い段階で達しているパーティーは存在しない。


「うん、ちゃんと覚えられたみたいで良かったよ」


「……あの、もう既に読み終えてから言うのもあれなんですけど、本当の本当に自分なんかにスキル書を渡して良かったんですか?」


「おう。少し前にあるダンジョンに潜ってたからスキル書は結構持ってるんだ。硬化も土魔法の二つはダブってたし」


「だ、ダンジョン……や、やっぱりダンジョンの宝箱からは良いアイテムが入ってる事が多いんですか!!??」


「そ、そうだなぁ・・・・・・まぁ、全部が全部良いアイテムって訳じゃ無いけど、自分が欲しいなって思ってたアイテムが手に入る事は勿論あるな」


冒険者としては当然、ダンジョンに対して憧れがあるグラン。

なので実際にダンジョンへ潜ったことがあるソウスケの話に興味津々になり、つい食い気味に尋ねてしまう。


(ボス部屋のボスモンスターを倒した後に手に入る宝箱に関しては大概利益になるアイテムが入ってるけど、普通にダンジョン内に落ちてる宝箱に関しては正直……六割ぐらいは確かに良いアイテムかもしれないけど、後の四割ぐらいは個人差によるけど微妙な物が多い)


「グランはやっぱりダンジョンに興味あるのか?」


「はい!! 仲間が出来ればいつかはダンジョンに潜ってみたいと思ってます」


「……そうだな。やっぱり一人でダンジョンに潜るのは危険だからな」


過去に一人でダンジョンの最下層のボスを倒し、攻略を果たしたソウスケが言うなという話だが、当たり前な事で重要な内容だ。


自分の力を過信した冒険者が上層だから問題無いだろうと思い、一人でダンジョンに潜って多数のモンスターに殺される例は少なく無い。


「ダンジョン内で何か気を付けておく事ってありますか?」


一先ず同じ場所に居続けるのも暇なので、二人で森を散策しながら話を続ける。


「……少し前にちょっと色々と教えた弟子? にも同じ事を話したと気がするんだけど、ダンジョンでは何が起きるか分からない」


ザハークと出会ったのもダンジョン内なので、本当にダンジョン内では何が起こるか分からないとソウスケは感じている。


「ダンジョン内での敵はモンスターや罠だけが敵じゃない。同じ同業者が敵になる場合もある」


「そういう話は聞いたことがありますけど・・・・・・本当にそんな事あるんですか?」


同じ獲物を狙っていて争いになるなら解るが、それ以外の理由で争いになるなどまだまだ冒険者歴はルーキーの域を出ていないグランは理解出来なかった。


「ある。俺は実際にそういう屑みたいな相手に遭遇したことがある。俺達と同じ冒険者の中にはそういった自分の欲を満たす為ならば、同業者がどうなろうと関係無いって思ってる奴らがいる」


「そ、そうなんですか……も、もっと色々と教えて貰っても良いですか?」


「おう、今日は別に予定無いからいくらでも教えるよ」

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