四百二話 余計なお世話なんだよ
(あ、あり得ない!! いったい何が起こったというんだ!!??)
腹に拳を叩きこまれた男は自分が何故倒れ伏しているのか、何故自分よりランクの低い子供が悪魔的な笑みを浮かべながらこちらを見下ろしているのか、男には理解出来なかった。
ランクが全てでは無い。上に行くには力だけでは辿り着けるステージでは無い。
故にイレギュラーな人物が存在する。
それは男も、他の三人も分かっていた。分かっていたはずなのだが……それでも我が身に起こると理解出来ないのがプライドというものだ。
ふざげるな、まだ勝負は終わっていない、俺達がEランクの子供に負ける筈が無い!!
そう叫びたかった四人だが、既に結果は周囲の冒険者達が下してしまっていた。
轟炎の鉄槌に所属するCランクの四人組はEランクのまだ子供の冒険者に負けたという結果を。
「さて、俺が勝負に勝ったんだから、今後二度と俺達に関わるな。余計なお世話なんだよ、お前らは」
完全に自分の方が各上だと思わせる様な威圧的な声に四人は思わず震えてしまった。
何か幻影を見た訳では無い、それでも自分より十は歳下の冒険者に怯えてしまった、恐怖してしまった。
それが、四人のプライドを打ち砕く。
その威圧は四人だけに向けられたものであったが、それでも野次馬の中の何人かはソウスケの雰囲気が一瞬だけ変化したのに気が付いていた。
「本当に面倒な奴らだったな」
自分が弱そうだと思われている分にはあまり気にしないソウスケだが、価値観を押し付けられるとイラっとする。
「ソウスケさん、あの・・・・・・今更なんですがあんな大勢の前でランク以上の強さを見せてしまって良かったのですか?」
「あぁーーー……まっ、良いんじゃないか。それらしい仕草はした訳だし」
四人を瞬殺し終えた後、ソウスケはわざと左手の指に嵌めている蛇腹剣を形状変化させた指輪を凝視した。
自分は自身の実力で四人を倒したのではなく、この指輪の能力を使って倒したのだと周りにアピールしていた。
その仕草には気付いている者が意外と多くいた。
(あれだけ気付いている奴らがいれば、俺が実は結構強いって事はバレない……と思う)
最後の言葉に威圧感が含んでいた自覚があったので、完全にバレないとは断言出来ない。
「それにしても、本当に厄介な人達でしたね。私達に負けたというのにまだソウスケさんにくだらない文句を言いますし」
「同感だ。自部の考えを持っているのが悪いとは言わないが、それを押し付けられるのは不愉快だ」
ほんの少し前に出来事を思い出したミレアナとザハークは心底嫌そうな表情になる。
(二人共本当に嫌そうな表情になってる。まぁ、俺を思っての反応なんだろうから嬉しいけど、ちょっとだけ……特にザハークの場合はそこら辺のポーションや回復魔法では治らない様な傷を負わしてしまうのではないかと心配だったな)
中々力のコントロールが上手くなってきたザハークだが、それでも怒りで我を忘れてしまった場合は手加減など無理であろうとソウスケは半分諦めていた。
しかし結果は相手の骨に罅を入れる程度で済み、ソウスケはホッとしていた。
「ソウスケさん、まだこの街に残りますか? 私としてはそろそろ離れた方が良いと思うのですが」
「そうだなぁ……今回の一件もあるし、正直もうここにいる必要は無いか」
鉱石は十分に集まり、鍛冶の経験を積めた。
元々の依頼は既に果たしているので、ソウスケとしてはミレアナと同様にこの街に滞在する必要は無いと考えている。
(鍛冶が出来る環境はどの街に行ってもあるだろうし……工具だけ買うか)
轟炎の鉄槌のメンバーと衝突したことで、クランの上層部と揉め事になればさらに面倒な結果になる事が目に見えている。
なのでソウスケはその日の内にそこそこ値段がする工具を買い、ミレアナは共に鉱山内で行動した三人の女性冒険者に手紙を書き、翌日には朝食を食べて直ぐに街を出発した。
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