三百九十八話 半分は善意ありの勧誘
ソウスケ達がクイーンメタルスパイダー率いるメタルスパイダーとその上位種の討伐を終えてから数日後、その一日は休日にしてのんびり過ごそうと決めていたソウスケ。
朝はいつもより遅めに起き、次はどんな武器や魔道具を造ろうかと考えていた。
「スパイロードにスペツナズナイフ、武器も良いけど単純に生活用品を作るのもありか」
魔道具といえば、基本的には武器よりも日常生活で使う物が多い。
「そういえば、これから少し寒くなってくるらしいな。暖房系の魔道具でも造るか」
ソウスケが思いついたのはエアコンと暖房カーペット。
この二つならモンスターの素材と魔石さえ用意出来れば問題無く造れる。
だが、造るのに必要な材料費を考えれば一般市民には少し手が届きにくい値段になる。
「何か良い道具は無いかなぁ~……」
日本で暮らしていた時の日々を思い出していると、扉を強くノックする音がソウスケの耳に入った。
「ソウスケさん!! 今いらっしゃいますよね。ギルドの者です!! 至急、話があるのですが」
「わ、分かりました!」
魔道具のアイデアを書いていた紙とペンをしまい、ソウスケはギルドの職員であろう人物を部屋の中へと通す。
「あ、ありがとうございます!」
「えっと……とりあえず水を一杯どうですか?」
「い、頂きます」
部屋に常備してある水をソウスケから受け取ったギルド職員の男性は一気に煽り、ソウスケに至急伝えなければならない内容を話す。
「か、簡単に言いますと、ソウスケさんのパーティーメンバーであるミレアナさんと従魔であるオーガが轟炎の鉄槌というクランと衝突して争いに発展しそうなんです」
「争いとは公論では無く、物理的にという事ですか?」
「そうなんです!!」
ソウスケは昨夜の時点でミレアナには明日一日ゆっくりすると伝えてあるので、ミレアナはザハークを連れて街を散策した後、ギルドへと向かった。
「分かりました、とりあえずギルドに向かいながら詳細を教えてください」
宿を出てギルドに向かいながら職員の話を聞いたソウスケは、二人が何故轟炎の鉄槌というクランと衝突したのか納得がいった。
というより、予測していた内容とほぼ同じであった。
ギルドに入ったミレアナは依頼書が張り出されているボードに向かい、面白そうな依頼や情報は載っていないかと探す。
そこに轟炎の鉄槌の中で、若手ながら将来を有望視されている男性冒険者が数人の仲間と共にミレアナへと声を掛けた。
内容は鉱山に三人の女性冒険者と入る時に声を掛けていた冒険者達と同じようなものであり、自分達のクランに入らないかという内容。
その言葉にミレアナは即座に不快感を表した。
だがクランに勧誘されたのはミレアナとザハークだけでは無く、ソウスケも含めてだった。
意外な勧誘にミレアナは驚き、今まで自分達を勧誘してきた者とは少し違うと感じる。
しかしそれも次に話す内容で即座に裏切られる。
内容としてはソウスケもクランに入って構わないが、パーティーは解消してミレアナとザハークはクラン内でも実力のあるメンバーと組んでもらい、ソウスケは冒険者になって数年ほど経ったルーキー達と組んでもう。
轟炎の鉄槌のメンバー達はソウスケはミレアナやザハークの様な強者と組んでいるのだから、レベルだけは一般的なルーキーよりも高いだろうと考えた。
その結果、ソウスケより数年ほど経験があるメンバーと組んでもらい、確かな実力を付けて貰おうという結論に至った。
強者に囲まれてレベルだけが上がって張りぼての強さを身に着けても意味が無い。
そんな善意と、半分は少し嫉妬が混じっての提案だった。
「なるほど……それで、その話はザハークも知ってるんですか?」
「はい、ギルドの外にも会話が聞こえていたみたいで、まさに鬼の形相と呼ぶべき表情でした。そして口論だけで終われば良かったんですけど……」
「最終的に模擬戦で決める事になったんですか?」
「そういう事です。そして……ミレアナさん達が負ければ轟炎の鉄槌のメンバーの提案通り、クランに加入するという内容だったので、流石にそれはソウスケ無しで行って良い内容だと思ったんです」
だがギルド職員に止められる実力は無く、脚が速いギルド職員がソウスケを連れてくるという考えに至り、まずはソウスケ達がいつも泊まっていると情報がある宿へと向かい、運良く遭遇できた。
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