三百九十三話 その穴を作ったのは……
鉱山の側面から入れる入り口を見つけ、急斜面を上りながら入口へと向かい、中へ入る。
「結構デカい穴だったな」
「人が鉱山に新しい通路を作ろうとすれば色々と問題と労力が必要なので、この通路を作ったのはモンスターかと」
「その可能性が高いだろうな。見たところ、考え無しに道を無理矢理作ろうとしたと思える。それもつい最近」
最近無理矢理作られた道。その道はどんなモンスターが作ったのか。
ソウスケの頭の中にそのモンスターが浮かんだ。
(もしかしたらだけど・・・・・・ブリザードリザードがこの道を作ったのか? 冷気を感じる訳では無いけど、壁がいつも通っている場所と比べて若干……ほんの少し冷たい気がする)
「ソウスケさん、何か考え事ですか?」
「いや、どうでも良い事を予想していただけだ。速足でメタルスパイダー達を探すぞ」
目的である多数のメタルスパイダーとクイーンメタルスパイダーの討伐。
できれば日が暮れる前には帰りたいなと思っているソウスケは周囲に火球を浮かばせながら感知の範囲を広げる。
「ッ! もう直ぐぶつかる」
「「了解」」
各自グラディウス、弓、長剣を持っていつでも攻撃が出来る構えを取り、ついにメタルスパイダーと遭遇。
始めてメタルスパイダーと遭遇したソウスケは思った以上にメタリックな体にちょっと驚きながらも円型の斬撃を放ち、体と頭の境目に入ると輪の広さを縮めて切断。
ミレアナの放った三矢は見事に脳に突き刺さり、ザハークは長剣でメタルスパイダーの体を綺麗に三等分。
丁度三体だったので、三人の初撃で戦闘は終了。
「……確かにちょっと堅かった。しかし誤差の程度だな。まだ水を使うまでも無い」
「そうですね。魔矢一発でも十分だったかもしれません」
魔力の節約にとミレアナは現在、中に矢を収納出来る魔筒を使用している。
「いや、実際に戦ってみない事には少しの魔力でも必要になるかもしれない」
「そうかもしれないな。ただ、流石にパラデットスコーピオンの上異種と同等ほどは強く無いと思うぞ」
「……あれレベルほど強かったら流石に大惨事過ぎるな」
ギルド内で多数のメタルスパイダーの討伐を呼び掛けた冒険者とその他多数の同業者の実力を思い出す。
(……正直、パラデットスコーピオンの上異種並みの実力をクイーンメタルスパイダーが持ってるとしたら、流石に数の力で圧倒するには個々の力不足だ)
文字通り自ら死にに行くようなもの。
それはその状況で見過ごせないとソウスケは思った。リーダーとして他のパーティーを引っ張ろうとしていた冒険者が弱い訳では無い。
しかしそれでも強さのステージが違う。
「さて、良い感じに釣れたみたいだし、さっさとしまうか」
流れ出すメタルスパイダーの血に他のメタルスパイダーが反応し、続々とソウスケ達の元にメタルスパイダーが集まってくる。
「ソウスケさん、先に謝っておく。魔石を斬ったり砕いてしまったらスマン」
「ちょっとぐらいは別に気にしないよ。それより……逃がさず全部殺せよ」
「あぁ、勿論だ」
「先陣は私が」
集まってきた大量のメタルスパイダーにミレアナは暗闇でもハッキリと見える目を生かして矢に風を纏わせ、発射。
加速が施された矢に多数のメタルスパイダーは反応できず、体を貫かれる。
「んじゃ……パパっと狩っちまうぞ」
斬る、殴る、蹴る、撃つ、焼く。多くの手段を用いてソウスケ達がメタルスパイダーを殺し続けること五分。
そう……たった五分。
お湯を沸かし、湯を入れてようやくカップ麺が出来上がる程度の時間。
しかし本気で狩りにいったソウスケ達が大量のメタルスパイダーを狩るには十分な時間。
特に身体強化を二重で使っていたソウスケの動きにメタルスパイダー達は全く付いて行くことが出来ず、自慢の糸や脚を使う機会を全く与えられずに殺戮された。
そしてザハークの長剣と体術にミレアナの矢によるサポートが上手くはまり、遠距離から糸で攻撃しようとしたミレアナの矢に邪魔され、気付いた時にはザハークの長剣で真っ二つ。
メタルスパイダーと自分の距離が縮まれば風矢で狙撃。
ミレアナのサポートが無い瞬間に迫る糸や麻痺液は斬撃と飛ばすか水弾であっさりと対処したザハーク。
三人は宣言通り一匹も逃がさずに全てのメタルスパイダーを殺した。
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