三百七十四話 うっかり
ソウスケの視界に入ってきてアイアンゴーレムはモデル人形のような細身の体系だった。
(おいおいおい、そりゃずる過ぎるだろ)
あそこまで速く走ることが出来るなら跳躍する事も可能だろう。
そう思える程にアイアンゴーレムのスピードは速かった。
しかし、結局は身体能力でソウスケ達を上回るわけではない。
「ザハーク、粉々にしない程度にやっちまえ」
「了解」
冒険者達の言葉を無視するようにソウスケはザハークに指示を出す。
一切臆する事無くアイアンゴーレムの亜種に立ち向かうザハークを見て、指示を出したソウスケにギョッとした表情を向けるが、ザハークが人ではなく鬼人族に見えた冒険者達はもしかしたらという希望を抱く。
その希望は現実となり、ザハークが落ち着いて放った正拳突きを食らった亜種は避けることも耐えきることも出来ず、後方へ吹き飛ばされて他のアイアンゴーレムの真正面に叩きつけられる。
(むっ、しまったな。魔石を砕いてしまったかもしれん)
ソウスケとしては魔石は多くの用途があるので絶対に欲しいと思っている筈。
しかし正拳突きを打ち込んだ感触から中には完全に罅が入ったように感じた。
「あらら? どうやら一撃で倒してしまったみたいだな」
「そうだがソウスケさん……申し訳ないが、どうやら魔石を砕いてしまったようだ」
「あぁ、なるほど。だから完全に動きが止まったのか。別に良いよ。体が木っ微塵になった訳じゃないんだし」
確かにアイアンゴーレムの亜種の魔石は欲しかったが、それでもこの街の冒険者達がその姿を認知しているという事は探せば見つからないモンスターではないとい。
「とりあえず、後ろのアイアンゴーレムは俺達で倒すぞ」
「了解です」
ミレアナは数本の火矢を、ソウスケは二つの火球を生み出し、アイアンゴーレムの四肢を徐々に削っていく。
その光景を後ろで見ていた冒険者達は最近噂になっている同業者の噂を思い出していた。
「成人したばかりの子供とスタイルと容姿もパーフェクトなエルフに、鬼人族に近いオーガの従魔のパーティーがこの街に来たってのは聞いたが……マジで何者だ?」
普通の火矢とは思えないほどの火力でアイアンゴーレムの手足を落としていくミレアナ。
アイアンゴーレムには確かに火魔法で体を熔かして動きを封じるという手段があるが、それにしても四肢を落とす時間が短い。
そして極めつけはソウスケがアイアンゴーレムの四肢を落とす方法だった。
「あの子、見た目は完全に前衛……よね? なんであんなにもファイヤーボールを自由自在に操れるの?」
「あっ、やっぱりあれは普通じゃないんだよな」
「そこまで珍しい訳じゃないけど、前衛タイプの冒険者が扱う技能じゃないわよ。それなのにあそこまで自在に……というか二つも操るなんて」
後衛タイプの冒険者なら出来てもおかしくは無い。
しかしソウスケは帯剣しており、杖や短杖等の武器は持っていない。
(杖以外を魔力媒体にした武器が無い訳じゃない。でもあの子は腰に帯剣している武器を使っていない。完全に自身の技術だけでファイヤボールを操っている。もしかして高ランク冒険者の子供? もしくは弟子?)
そのどちらでもなく、完全にソウスケの才能と努力によって得た技術。
数分後、完全に四肢を熔かされたアイアンゴーレムは動くことが出来ず、最後はソウスケのファイヤーボールによって魔石がある位置を熔かされる。
そして第二の心臓である魔石を取られたアイアンゴーレムは完全に動きを停止した。
「まっ、こんなところか」
「お疲れ様です。このアイアンゴーレムはどういたしますか」
「……とりあえず魔石は回収しよう。なぁ、こいつらは俺が貰っても良いよな?」
「あっ、はい!!! どうぞお好きに、それじゃ、有難うございました!!! それでは!!!」
ソウスケとミレアナの戦い方に集中していた冒険者達はいきなり声を掛けられてテンパり、相手が年下にも関わらず敬語で礼を言ってその場から去って行った。
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