三百七十三話 可能性はあるか?
宿に戻り、ミレアナが帰ってくるとソウスケは本日ちょっと後悔しながらもお買い得だったハンマーを見せた。
「ず、随分と立派なハンマーですね」
「だろ。中々に金が吹っ飛んだけどな」
(ちょっと後悔している。ただ、水龍の蒼剣と同じ感覚というか匂い? がしたんだよな)
ソウスケの予想は全て外れている訳ではなく、白金貨三十枚のハンマーには岩窟竜の素材が使われている。
ドラゴンの素材から造られたという点では共通している。
「ただ、こいつはどうやら俺にしか使えないみたいなんだよな」
「扱うのに条件があるのですか?」
ソウスケ、ミレアナ、ザハーク。
この三人の中でソウスケしか使えない条件といえば人族であること、複数の魔法スキルを習得していることの二点。
エルフにしか効果を発揮しない武器は故郷で見たことがあるミレアナだが、人族専用の武器というのは見たことも聞いたこともない。
「もしかして、土魔法が扱えないと使えないんですか?」
「そういうことだ。正確には効果を発揮することが出来ないだけどな。多分スキルレベルが五か六以上ないと使えない。俺だけじゃなく体格的にザハークが使えると思っていたんだが、ザハークは土魔法を習得していないからな」
(あいつは希少種だからもしかしたら可能性はあるかもしれないから今後に期待だな)
ベットに置いてあるハンマーを持ち上げ、じっと見つめるソウスケ。
「良い武器だとは思いますが、なぜこのハンマーをお買いになったんですか? やはり他のと比べて質の良い武器だったからですか?」
ソウスケが鈍器系の武器を使わないので、ミレアナとしてはソウスケがハンマーの魔道具を買ったと知ったときは内心で驚いていた。
(ソウスケさんなら問題なく扱えるとは思いますが、剣や体術よりは技術が劣ると思うのですが)
だが、ソウスケから返ってきた答えは少し考えれば簡単にたどり着くものだった。
「だってさ、今回戦うメインの場所は鉱山の中だろ。だったらロックスライムのように体の表面も中も堅いモンスターが多いと思うんだよ。だからこういった打撃系の武器があった方が良いだろ」
「そ、そうでしたね。ここ最近は鉱山で戦っていたという事を忘れていました。確かにそれを考えるとハンマーのような打撃系の武器があった方が心強いですね」
「だろ。いくら素手で戦えても身体強化のスキルを使っても堅いもんを殴ったら痛いからな」
ソウスケが極限まで身体強化のスキルを使っても手が痛くなる程の堅さを持つモンスターは・・・・・・正直そこまでいない。
だが、魔力の消費を抑えるのならうってつけの武器だといえる。
「そうですね。それで、明日から再び鉱山での採掘ということでいいですか?」
「そうだな。これから一週間ぐらいはギルドの依頼も受けながら鉱石の採掘を優先する」
一週間も鉱山に通って採掘作業を行うなど、採掘の専門職でもそこまでブラックではない。
しかもソウスケの場合、朝から昼食を挟んで夕方まで採掘作業を行う。
はっきり言ってブラックだ。超ブラックだ。
しかし全員が驚異的なスタミナを有しているので、全くもって問題無い。
そして翌日、朝食を食べ終えたソウスケ達は直ぐに鉱山へと向かい、採掘を始める。
その日は問題無く採掘を行い、襲ってきたモンスターを倒す。
だが次の日、ソウスケ達が採掘を行っていると一つの集団が慌てた表情で走ってくる。
集団の奥からは重く、しかし速さを感じさせるリズムの足音が聞こえる。
「お、お前ら!!! そっから速く逃げろ!!!! アイアンゴーレムとその亜種だ!!!!」
集団のリーダーがソウスケ達に後ろから襲ってくるモンスターの内容を伝えた。
(ゴーレム系って基本的に足が遅いよな。装備からして駆け出しって訳じゃなさそうだし、アイアンゴーレムから逃げられないとは思えない)
しかし亜種というのがどのような姿をしているのか直ぐにイメージ出来なかった。
「・・・・・・ま、マジでか。そりゃ反則じゃないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます