三百七十二話 真面目に働け
「どこにでも阿呆はいるもんだな」
ソウスケが鍛冶師のドワーフから土属性のハンマーを購入し、店を出た後に数人の者達がソウスケの後を付けていた。
それを直ぐに見抜いたソウスケは面倒に思いながらもささっと片付けたかったので人気の無い場所へと入った。
ソウスケが路地裏に入るのを確認した数人は何故ターゲットが店を出てから直ぐに人気の無い場所に移動したのか、深く考えずに後は付けた。
そして数分ほど歩いたところでガラの悪い数人はソウスケの姿を見失った。
「探しているのは俺か?」
後ろから聞こえてきた声にガラの悪い数人は即座に後ろに振り替える。
目で全く追う事が出来ず、音さえ聞こえなかった。
普通ならばこの状況の時点でターゲットが自分達よりも実力が上だという事に感づいてもおかしくない。
だが、数的に有利な状況とは実に悲しく、ヤンキー達は特に怯むことなくデカい態度でソウスケを恐喝しようとする。
内容を纏めれば、服以外の荷物をまとめて寄こせというものだった。
(どの世界にもこういった不良はいるもんだな。というか、見た目からして冒険者なんだよな? それなら自分達と俺の実力差ぐらいちょっと解ってくれても良いと思うんだが)
ざっと不良冒険者たちの装備を見る限り、そこそこ良質な装備を身に着けている。
(自分達で買ったのか、それとも他の冒険者から奪ったのか・・・・・・おそらく後者だろうな)
目の前の奴らの噂などは知らないし、完全に外見での決めつけ。
自分の胸倉を掴んで来ようとしているので、完全に自分と敵対したことを確認したソウスケは全員に雷の魔力を浴びせ、それでも動きそうな奴は足の骨を折って動きを封じた。
「もう、それだけ装備が整ってるんだから普通に冒険で金を稼いで良い武器を買えば良いのに。あっ、迷惑料としていつらは貰っていくから」
不良冒険者達が持っていた武器は相手の動きを封じる物が多かった。
(こいつら、絶対に反抗してきた相手にはこの武器を使って動きを鈍らせ、封じて色々と奪ってるんだろうな)
体がほぼほぼ動かない状態で必死に抵抗しようとする不良冒険者達だが、抵抗空しく服以外の殆どを剥ぎ取られてしまったヤンキー達。
「あっ、最後に一つだけ言っておくけど、俺や俺の連れに手を出そうとしたら、容赦無くぶっ殺すから覚えておけよ」
基本的に無表情だったソウスケから鋭い殺気が漏れ、不良冒険者の中にはチビってしまった者もいた。
この一件で自分達には人を見極める実力が無いと思った不良冒険者たちは脅迫まがいの行為は止め、真っ当に冒険者としての活動を始めた。
「武器が多ければ多い程手段が増える。俺の場合は魔法があるから必要ないかもしれんが、やっぱりこういった武器を使っていれば、俺自身が多数の魔法を使えるって情報はあまり広まらないかもしれないし」
剥ぎ取った武器がそこそこ良い物だったので、ソウスケとしては不良冒険者達が絡んできたことに感謝だった。
日が落ちるまで武器や防具にアクセサリーを見て回ったソウスケ。
しかし全ての店を回ることは出来ず、見始めれば長時間その店に滞在してしまうので、さほど多くの店を見て回ることは出来なかった。
「金があるから殆どの武器は・・・・・・いや、あのハンマーを買ったことで中々に金が吹っ飛んだんだ。これからは金遣いに注意した方が良いな」
大金を手に入れたことで自然と金遣いが荒くなっていたソウスケだが、この機会にちょっと出費を抑えようと考える。
(あれだけデカいハンマーでもザハークなら扱えると思っていたけど、土魔法が一定以上のレベルで扱えないと機能しないんだったな。すっかり忘れていた)
自分だけでなく、ザハークも使えると思っていたが、効果を扱える条件を思い出して流石に白金貨三十枚は高かったかなとソウスケはちょっとだけ後悔した。
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