三百五十八話 今まで見た事が無い光景
ソウスケ達は目的の街に到着し、一先ず宿を探して休息をとっていた。
「結構賑わいのある街だったな」
「鉱石が近くにあるのですから、それなりに栄えているのでしょう」
「それもそうか。にしても、モバールではあまり見ない商売の仕方? をしていた奴らがいたな。あれは新米の鍛冶師、なんだよな?」
三人がやって来た街、アインドには鍛冶師の数が他の街と比べて多く、若者の憧れの職業の一つ。
そんな鍛冶師になり、数年ほど経った若者が自身が造った武器を格安で路上販売を行い、冒険者や戦いを生業とする者達との縁をつくる。
「でしょうね。そこまで良い武器は揃っていない様に見えました」
「だろうな。質の良い武器があんな値段だったら商売あがったりだろ」
「俺はしっかりと見ていなかったが、一つも良い武器は無かったのか?」
ザハークの質問にソウスケはチラッとだけ見た武器の数々を思い出す。
「新米鍛冶師が造ったにしては良い武器って感じるのはちょいちょいあったかもしれないな。まっ、しっかりと見た訳では無いから何とも言えないけど」
「そうか。よくよく考えれば、今のソウスケに新しい武器は必要無かったな」
「確かにそうかもしれないな。でも、欲しいと思える武器に出会えるかもしれないから武器屋を巡るのは結構楽しみだ」
蛇腹剣、水龍の蒼剣、飛竜の双剣、コボルトキングの素材を使用したグラディウス、バアゼブレイヤ。ソウスケにこの四つの武器を所持している。
これ以上の武器を望む必要は無い。
最下層のモンスター、パラデットスコーピオンを倒した時に得た宝箱の中に入っていた武器も並では無い物だった。
「そうですか。それなら休日は武器や巡りが中心ですか?」
「あぁ。金は持ってるんだし、欲しいって思った武器は買えるだろ」
「この街で鍛冶はしないのか?」
元々は鉱石に用があったがソウスケ。
しかしザハークは鍛冶が盛んな街でもあるのだから、鍛冶を行う環境も整っていると予想。
それは事実であり、金を払えば誰でも鍛冶を行える場所も存在する。
「どうしようか・・・・・・いっそ鍛冶場を作って貰うか」
「? この街を拠点に活動するのですか?」
「いや、そういう訳じゃ無い。俺のアイテムボックスがあれば、鍛冶場をそのまま移動出来るだろ」
普通なら考えられない。だが、ソウスケならそれが可能。
ミレアナとザハークは最初だけ何を言ってるんだこいつは、といった表情をするがソウスケが使うアイテムボックスの規格外な能力を思い出し、そんな芸当が可能だと解った。
「それは・・・・・・ソウスケさんならではの凄技ですが、そんな事をすれば目立つのは必然じゃないですか?」
「確かにそうだな。ソウスケがその能力がバレても構わないというなら問題は無いと思うが」
「うっ、その可能性を忘れていたな」
鍛冶場ほどの体積を仕舞えるアイテムボックス。
それだけでも凄いのだが、鍛冶場は日々整備しなければならない。
それを毎日使わない冒険者が扱うという事は、放っておいても問題は無いと解ってしまう可能性がある。
「はぁーーーー・・・・・・有難いが、人前で堂々と使えないってのは面倒な能力だな」
「それはそうですね。それなら早いとこ、例のあれを実行してはどうでしょう」
「あれなぁ。でも、俺どんな魔法陣を書けばいいか知らんからな」
ソウスケ達と敵対した人物を暗殺する為に、代わりにそれを行って貰う悪魔との契約。
悪魔を召喚し、契約する方法は多数存在するが、一番有名なのは既存の魔法陣を描き、契約する者の魔力を注ぐ方法。
ただ、ソウスケはその魔法陣の書き方を知らない。
そもそもな話、悪魔を召喚する用の魔法陣は知れ渡っていない。
魔法陣にも種類は存在しており、契約する者の魔力によって召喚される悪魔の能力や強さが関係する魔法陣は研究機関や学園が秘匿している。
「今すぐに必要って訳でも無いから今は良いや。思わぬ流れで手に入るかもしれないし」
楽観的なソウスケだが、手に入れようと思って直ぐに手に入る物では無いので、現状で正解な判断だった。
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