転移したらダンジョンの下層だった

三百四十話 そんな恋愛が本当にあるとは

「綺麗ですね。街の明かりがこれほどまで美しいとは思っていませんでした」

「やっぱり最初はそう思うよね。ここから見える景色は歓楽街の方向だから他のエリアと違ってこれから明るくなる。だからこの景色が夕食を食べ終わるまでずっと楽しめるってわけ」

「相変わらず綺麗。歓楽街の中はあまり好きじゃないけど、こうやって夜に上から眺めるのは、とても気分が良い」

三人は空いている椅子に座り、大きな窓から見える景色を楽しむ。

(本当に綺麗な景色ですね。でも、ソウスケさんが以前まで住んでいた世界ではこういった景色は当たり前のように見られると言っていました。やはり科学というのはとんでもない技術なのですね)

実際に自身の目で確かめた訳では無いが、こういった景色が当たり前であり、更に高い景色から光り輝く街を日下ろす事が出来る。

その話だけで魔法や魔道具より化学が優れた技術だと感じた。

「ここは結構カップルがデートに来る店なのよ」

「この景色を眺めながらのデートはこう、雰囲気が良くなるのは確かですね」

「でも、偶にそれをまだ結婚したり恋人が欲しい思っている人達が、そんなカップルを見て悔しそうに歯ぎしりをしている時もある」

「そ、それはなんと言いますか・・・・・・」

この店の料理はそこら辺の料理店と比べて多少量が少ないが、味は確かなのでデート以外の理由で来る客も多い。

いや、基本的に仲間や同僚や一人で飯を食べにくる者達が大半だ。

そんな者達にカップルが仲睦まじい姿を見たくなければ他の店で食べれば良いなどとは言えない。

(ハイ・エルフの里で暮らしていた時はそういった思いをしている人は殆どいなかったと思いますが、人族の世界の恋愛事情は難しいものですね)

里で暮らしているハイ・エルフ達は全員美形なので、容姿に関しては人族と比べて次元が違う。

そんなイケメン、美女しかいない里でどうやって恋人を決めるのかというと、完全に自身の好みで恋人を選ぶ。

里によっては多少の上下関係があるので人族の貴族の様に好きでも無い者と結婚する場合がある。

そして好きな人が他の同姓に奪われるかもしれない。

そうなればやる事はただ一つであり、好きな人が惹かれる内容に関して努力する。これ一点のみ。

ハイ・エルフ同士の恋愛事情に容姿を問題する者はほぼいない。

偶に里の外の者と出会い、線の太い体格を持つ者に興味を惹かれるハイ・エルフがいる。

「まっ、そういう奴らに限ってモテる努力をしてないのか、高望みし過ぎかのどちらかが定番なんだけどね」

「たま～～～～に、小説であるような貴族が一般市民に惚れたが中々上手くいかず、イチャイチャしているカップルを羨ましそうに眺めている時がある」

「ほ、本当にそんな事があるんですか？」

ミレアナが住んでいたハイ・エルフの里は外から物流に抵抗は無く、一部の豪商のみが取引をしている。

その取引物の中には当然本もあり、恋愛物の小説は若い女のハイ・エルフから人気が高い。

勿論ミレアナも友人達と一緒にそういった小説をドキドキしながら読んだことがある。

(身分違いの恋って小説の中だけだと思っていましたが、本当に存在するのですね。ですが、実際のところ物語の様に上手くいくのでしょうか？)

小説の中の物語の様に全てが幸せに向かう訳では無い。

そんな事はミレアナも解っている。

「ミレアナはそういった身分違いの恋愛話は結構好きなの？」

「そうですね。里で暮らしていた時は良くそういった恋愛小説を呼んでいました」

「やっぱりそういった小説って一度はハマるわよね。冒険者になって稼げるようになるまではお金が無くて買えなかったけど、お金が貯まって一冊買ったら結構ハマるのよね」

「私もリフィラが買った恋愛小説を読んだけど、浪漫がある内容だったのは覚えている」

物語に出てくる主人公と同年代では無くても、やはり浪漫のある恋愛話は女性の好物だった。