三百三十五話 諦めが肝心
今日一日ソウスケとザハークの二人と別行動となったミレアナはラフな格好で街をブラブラと散策する。
(今日一日自由だとしても、どこに行くか全く決まっていませんし・・・・・・どうしましょうか)
部屋の中で錬金術の練習や気を使ってフィギュアを作るのも悪くないと考えたが、明日からはまたダンジョンに潜るので今日はのんびりと楽しむという結論に至った。
しかし行く当ても特にないミレアナ。
そこで一人の男が友人に唆され、自身も乗り気になったところでミレアナをナンパしようと近づく。
「あれ、ミレアナじゃない」
「本当だ。一人で、散策?」
男がもう少しで声を掛けようとした時、森緑の大樹のメンバーであるリフィラとミナが先に声を掛ける。
「リフィラさんにミナさん。私は今日ソウスケさんとザハークとは別行動なので一人でブラっと散策していたんです。お二人は一緒に買い物ですか?」
「買い物って訳じゃ無いかな。ミレアナと一緒でジーラスとバルスが二人で出掛けているから私達も一緒に出掛けようって話になったな」
「今丁度小腹を満たしたところ」
ミレアナをナンパしようとしていた男は二人が合流した事でどうするべきか迷うが、一緒にいた友人が丁度二人なので一緒に行くぞと手で合図する。
少し離れた場所にいた友人二人はリフィラとミナの容姿の高さに惹かれ、速攻で頷いて男と合流しようとする。
だがそこで一人がある事に気付く。
それは三人とも短剣を装備している事だった。
三人は戦闘職に就いていない一般人な為、もし揉め事に発展してしまった場合に万に一つ勝ち目は無い。
隣にいた友人はその事に気が付き、二人で男にナンパは止めるという合図を送る。
ミレアナ達とあと少しの距離にいる男は何故友人達が急にナンパを止めようと言い出したのか解らなかったが、送られて来たジェスチャーを見て視線の先を変えると、三人が短剣を装備している事が解った。
男は友人と同じ考えに至り、即座にその場から離れて友人たちの元へ戻った。
「もしよかったら今日一日私達と一緒に遊ばない?」
「良いのですか?」
「私は賛成」
ミナも特に反対せず、賛成との事だったのでミレアナは今日一日二人一緒に行動することにした。
少しの間露店を見回った後、三人は洒落た明るい雰囲気レストランに入る。
「どう? 中々良い雰囲気のレストランでしょ」
「はい。朝食、昼食を取るのに適した内装かと」
内装にはオレンジから緑の中間の色が多く使われており、店内の空気はとても落ち着いる。
それに合わせてか、店内には多くの女性客がいるのだが賑やかに喋ってはいるものの、決して喧しいと思う程煩くは無い。
「そういえば、ソウスケ君とザハークとは別行動って言っていたけど、二人はどこに行ってるの?」
「お互いにどこに行くかも話していないのでわかりません。ただ、一応休日なのでダンジョンに潜ったり街の外に出てモンスターを狩ったり等はしていないと思います」
「・・・・・・この街だと、劇やパフォーマンスショーより、カジノが有名かもしれない」
「カジノですか」
ミレアナは頭の中に知識として入っているが、あまり中身を知らない。
ただ、賭け事であるのは解っているので失敗すればお金を失うイメージが第一に浮かぶ。
「そう。ジーラスとバルスも休日には遊ぶ用のお金を持って楽しんでるのよ。私達もたまーーーに行くけどね」
「本当に偶に。偶に行けば、丁度良い気分転換になる」
「ミナの言う通りね。ソウスケ君はそういった遊びは好きなの?」
「そうですねぇ・・・・・・多分好きだと思いますよ。そして絶対に遊び終わるころにはお金が増えていると思います」
ソウスケとそういった話をした事は無いが、ミレアナはソウスケがリアルバトルではなくマネーバトルでも負ける姿が想像できなかった。
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