三百二十二話 いきなりかよ

ソウスケがルーレットの次に選んだゲームはブラックジャック。


ますブラックジャックで遊ぼうと思う前にソウスケは一つ疑問があった。

なぜそこまで紙が多用されていないこの世界にトランプが存在するのか。


その理由をソウスケは二人の尋ねる。


「どっかのダンジョンで宝箱の中からトランプとダイスが出て来たんだ。当初は唯の紙切れとしか思われて無かったらしいが、とある貴族がトランプやダイスで勝負する方法を思い付いた。それがカジノで採用されたらしいんだよ。もう何百年も前の話だけどな。だからそのダンジョンではトランプやダイスが宝箱の中から良く手に入るんだが、それなりの値段で取引されるから冒険者にとっても需要があるっちゃあるな」


宝箱から良く手に入り、ある程度の値段で買い取られる。

生活費にあまり余裕が無い冒険者になって数年ほどのルーキーにとってはジーラスの言う通りある程度需要がある。


ただ、そのダンジョンでは上層、中層、下層関係無しに宝箱の中からトランプとダイスが出る為、中堅どころから高位ランクの冒険者にはあまり歓迎されないダンジョンだった。


(そ、それは確かに遠慮したいな。命を懸けて戦って得た物がトランプやダイス・・・・・・状況にもよるが、虚しくて泣きたくなる場面ではあるな)


しかし中層や下層に行けばそこそこの物は手に入るので全くルーキー以外の冒険者がいない訳では無い。


「そんじゃ、ブラックジャックで遊ぶか」


丁度人数分空いていたテーブルに座り、基本的なルールをジーラスから聞いていたので、ソウスケはディーラーから説明を受ける事無くゲームを開始。


まずは幸運のスキルを使う事無く始めたのだが・・・・・・ソウスケは早速自身の運を使い切ってしまったのかと思った。


最初にベットするチップをベットエリアに置き、ディーラーが自身とプレイヤーにカードを二枚づつ配る。

そして全員カードを確認する。ディーラーだけは二枚の内一枚だけはプレーイヤーにカードが見える様に伏せている。


ソウスケはカードを確認した瞬間、気を付けようと開始まで被っていた仮面がいきなり崩れそうになった。


(・・・・・・嘘でしょう)


崩れそうになる表情を必死で抑えるソウスケ。

他のプレイヤーがヒット(もう一枚カードを引く行為)を宣言する中、ソウスケだけはスタンド(カードを追加せず、現在の手札でディーラーと勝負する。


(もうちょっと賭けておけば良かったーーーーー)


一回目のブラック弱という事でソウスケが賭けたチップの量はお金に換算すると銀貨三十枚。

今回はザハークも参加しており、八人の内誰もサレンダーはしなかった。


そして手札を見せる時・・・・・・ソウスケは思わず言ってしまった。


「ブラックジャック」


別にカッコつけたかった訳じゃ無い。

ただ・・・・・・ただただ本能的に言ってしまった。まだギャンブルを初めて一時間も経っていない初心者にこの興奮が抑える事は不可能だ。


ディーラーの手札は合計で十八とそこそこ二十一に近い。

しかしソウスケ以外に勝ったる者はおらず、ソウスケの一人勝ちとなった。


通常の勝ちならばベット数の二倍になってチップが返って来るが、手札が十、ジャック、クイーン、キングとエースでブラックジャックとなって勝利した場合は二点五倍になってチップが返って来る。


「マジかソウスケ!! しょっぱなから絶好調じゃねぇーーーか!!!」


周囲の客たちやディーラーもいきなりのブラックジャックに驚く。

ソウスケも当然驚きが残っているが、いきなり運を使い果たした気がしたので幸運のスキルを使うまでは少額で勝負を行い続けた。

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