三百十一話 お互いに同情する

ソウスケ達がジーラス達に加勢し始めてから十分後。

ようやくモンスターの大群を一匹残らず倒し終えた。


「マジで助けに来てくれて助かったぜソウスケ!!! お前達は俺達の救世主だ!!!」


「ちょ、そんな恥ずかしい事を大声で言わないでくださいよ」


ジーラスはソウスケの背中をバシバシと叩きながら礼を言うが、救世主という単語にソウスケは背中がむず痒くなる。

事実、ジーラス達があのまま他の同業者の加勢無しで戦っていた場合、生存率はかなり低かった。

モンスターの大群から逃げ切れたとしても、誰かしらを犠牲にしなければならなかった。そんな状況だったので、ジーラスだけでなくアルスやリフィラに皆もゼルート達は自分達の救世主だと思っている。


「いやいや、実際ソウスケ達が助けに来てくれねぇーーーと、あの状況じゃ自分達の全力も出し辛かったからな。生き残れたついでに鬱憤も晴らせたから最高だったぜ」


「その気持ち超ーーー解る。なるべくお互いのフォローをしながらってなると全力で戦いにくいしね」


誰か一人でも大きな怪我を負えばそこが穴となる。

頭の良いモンスターはそれを理解し、一人の冒険者を集中攻撃する事がある。


(今回の戦いで、役に立たなかったとは、思わない。でも、私の防御力や回避力が低いから、みんなが全力を出せなかった)


広範囲の魔法を使ってモンスター仕留める事は出来た。

だがそれ以上に仲間の脚を引っ張ってしまったと思い、責任を感じているミナは今回の様な事が二度と起こらない様にと、表情は変わらないが真剣に考え始める。


「にしても強いとは思ってたけど、本当に強かったな。特にその剣、初めて見る形状の剣だな。テーマは骨か?」


「蛇腹剣って名前の剣で。テーマは多分骨と蛇かと思います」


「確かにうねうねとノコギリみたいな刃が伸びるから蛇っぽいな。凄い便利そうだが、結構扱うのに苦労するんじゃないか?」


ジーラスは剣を扱っている者として、本能的に蛇腹剣が簡単に扱える物では無いと解った。


「そうですね。結構自由に動かせるんで、動かしながら自身もある程度の速さで動くってなるとある程度の魔力操作というか、意識を剣を体に分ける必要があると思います」


「もしかし、並列思考のスキル習得していないと、扱い辛い?」


体と剣に意識を分けるというワードに、パーティーの中では一番知識が豊富なミナは蛇腹剣を扱うのに必要なスキルは並列思考なのではという答えに至った。


「はい。更にもう片手に違う武器を持つってなると余計に並列思考のスキルを習得していないと扱えないかと」


「確かに刃を伸ばして離れた敵を斬っている時は隙が出来るもんな。それを埋めるにはもう片手で武器を扱っていないとなぁ・・・・・・ただ、それにしても刃がギザギザしてるからか、斬り後がエグイな」


ジーラスの視線の先には切断されたのではなく、パッと見抉られたようなモンスターの切断面がある。


「確かにこういった形で傷を付けられたら痛みが中々治まらないだろうな。まさに抉り斬ったって表現が正しいな。そっちのグラディウスも中々の物だが、そっちの蛇腹剣がソウスケの相棒か?」


「そうですね、こいつが俺の相棒です。バルスさんの相棒はその大斧ですか? チラッとだけ見てましたけど、中々強烈な技を使っていましたけど」


「ジャックルレンスの事か。あれは確かに折れも強烈な技だと思っている。攻撃を放ったことで得られる効果も中々魅力的だが、俺の魔力総量だと一回使えばもう一回は使えないんだ。だから絶対に魔力を回復させるポーションを飲める状況じゃなきゃ普通はやらないんだよ」


「結構な魔力量を使うんですね。でも、あんな攻撃を連発されたらちょっと敵に同情しますね」


「俺はソウスケの蛇腹剣に斬り刻まれる敵の方に同情するけどな」


お互いが軽口を叩駆ける様な状況になり、ジーラス達は自分達が本当に遭遇すれば生き延びる確率がゼロに近い状況を乗り越えたんだと実感していた。

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