二百九十九話 今更ながら
「うん、やっぱり美味いな」
「そうですね。香辛料を振りかけるとより美味しくなりますね」
「まだまだ戦いの経験は足りないモンスターだったが、味の方は中々ですね」
昼間に倒したハイ・オークの上位種達の焼肉を食べながらソウスケ達は二十七階層で休息を取る。
「やっぱりアイテムボックスのスキルは万能だな」
「ここまで万能なのはソウスケさんのアイテムボックスが特別だからですよ」
今回の食卓にはハイ・オークの肉だけでなく一口サイズに刻まれた野菜や果物もある。
野菜は地上で買った物であり、果物は上層の森の中で採った果物なので、それからの時間を考えると味が劣化して不味くなるのは確実。
「収納容量に限界が無く、入れた物の時を止める。確かにそういったマジックアイテムが無い訳では無いと思いますが、それでもレア度十は確実の代物です」
「・・・・・・つまりソウスケさんが持つ水龍の蒼剣よりも価値があるという事ですか?」
「一概にそうは言えませんが、個人や国にもたらす利益を考えれば容量に限界が無く、入れた物の時を止める魔法袋の方が価値は高いかと」
ソウスケが持つアイテムボックスと同様の効果を持つ魔法袋が現れれば、戦争の種となりかねない。
それはソウスケ自身も解っているので、人前でアイテムボックスを使はないようにしている。
(けどこの状況を他の冒険者に見られるとハイ・オークの肉や果物は現地で採った物って思われるかもしれないけど、野菜に関してはちょっと疑われるよな)
完全に時を止めずとも、時間の流れを遅らせるか数日の間は完全に時を止められる。
他の冒険者達がソウスケ達の野営での食卓を見ればそういう効果を持つアイテムボックスのスキルを習得しているのか、それとも魔法袋を持っているのかとまず疑う。
そこで常識のある冒険者ならば馬鹿な行動を取る事は無いが、その話を他の冒険者にする可能性が無い訳では無い。勿論そこに悪意が無い場合もある。だがそれならば余計に質が悪い。
最初から悪意を持つ冒険者ならばソウスケ達に奇襲を仕掛けて奪おうとする者がいるのも事実。
ダンジョンの中で一つの冒険者が宝箱から価値の高い魔道具を見つけたところで後ろから襲い掛かって殺し、魔道具を奪うケースなど何も珍しくは無い。
(というか今更だけど水龍の蒼剣は人前で使う武器じゃないな。使うにしても・・・・・・出来れば仮面みたいな魔道具を付けて戦いたいな。顔バレ防止の為に)
今はまだ水龍の蒼剣を使わなければ勝てないような敵にソウスケは挑むつもりは無いが、それでも使わなければいけない状況に追い込まれれば躊躇なく使うつもりでいる。
「まぁ、そんなレア度がバカ高い道具は人前で使わなければいい話だ。このダンジョン内でも今んとこ水龍の蒼剣並みに驚く様なマジックアイテムや道具は出ていないんだ」
(正直、なんであのダンジョンで水龍の蒼剣なんて超超超高価な魔剣が出てのか全く解らん。ダンジョン内のモンスターだってそこまで強くなかったし、階層だって転移したばかりの俺にとっては深かったかもしれないけど、今考えると水龍の蒼剣並みにレアな魔道具が出る階層でも無い)
自分を転移させて神が気を利かせたのかもしれない、ソウスケはその可能性が無くもないと思った。
自身が頼んでいない解体のスキルまでくれた。それなら強力な武器もついでにくれたのかもしれない。
ただそうであったとしても、それをソウスケが知る術は一つも無い。
「次の三十階層のボスは蜘蛛系のモンスターですね」
「昆虫らしいモンスターがボスか。吐き出してくる毒液には要注意だったっけ?」
「そうですね。毒液はそのまま毒液として吐き出す攻撃と凝固して毒の槍として吐き出す二つのパターンがあります。それとやはり吐き出す糸にも要注意かと」
毒液の様に性質を変えて鋭い針に変える事も出来る技術派モンスター。
かといって力が無い訳では無い。接近している時に警戒を怠れば八本の脚のどれかで貫かれる事もある。
(ボスの蜘蛛がどれだけの冒険者を殺してきたのか。それも結構重要だよな)
冒険者と戦った回数が多ければ多いだけ繰り出してくる技や動きを実力がある魔物は覚える。
そうすれば自分達の動くも半分ぐらいは読まれるのでは。
そう思ったソウスケは少し不安になった。
「・・・・・・戦いが始まったら直ぐに潰した方が良いかもな」
「短期決戦、という事ですか。ならば自分も全力でなるべく素材は壊さない様に手刀で相手をした方が?」
「そうだな。ザハークは今回なるべく打撃より斬撃で戦った方が良いだろう。俺もそうした方が良いか」
「眷属召喚と言うスキルの召喚魔法を持っている様なのでソウスケさんの言う通り、短期決戦で戦った方が良いかと」
短時間で決着を着ける事が決まり、それそれどの様な攻撃をしようか考え始めたソウスケ達は自然と速く食事を取り、風呂や歯磨きを終わらせて少しの間起きてから眠りに着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます