二百八十話目を離すなよ

ソウスケ達三人はその場から大きく跳躍し、五人の冒険者とフォルス達の間に立った。


「よぉ。まだ大丈夫そうか三人とも」


「「「そ、ソウスケさん!」」」


「んだぁ、てめぇらは。そのガキ共の仲間か?」


まだ二十代前半であろうにも関わらず、世紀末野郎の様な喋り方にソウスケは思わず吹き出しそうになった。


(落ちれば色々と落ちるとこまで落ちていくって事か)


確かに冒険者のランクはフォルス達より上で純粋な身体能力もレベル差により上だが、それでも碌な戦い方は出来ないのだろうとソウスケは感じた。


「仲間って訳じゃないけど、知り合いって感じだな。だからこうしてお前らみたいなこの先未来も無さそうなゴミ屑共に襲われているところ助けに来たって訳だ」


「へっ、何の正義感に触発されたか知らねぇが、てめぇらみたいなまだ冒険者に成り立てのガキ共に負ける訳無いだろうが!!!!」


一人の世紀末冒険者のセリフを聞いたソウスケは目の前の五人が本当に大した腕を持っていないのだと解った。


(俺は本当に見た目がフォルス達とそこまで変わらないから弱そうに見えるのも解る。ミレアナに関してもまず先に実力云々より見た目とスタイルで性欲の対象としてか見れてないんだろう。でもザハークを見てあんな余裕な態度を取ってるって事は・・・・・・あぁーー、でも別に全員がそういうバカって訳では無いみたいだな)


数人はザハークの威圧感を受けて後退りしている。


「あっそ。まぁ・・・・・・これからあんたらを殺すんだから関係ないんだけどな」


「はっ! 随分と調子に・・・・・・」


一人の男が喋り終える前に言葉が途切れた。

不思議に思った四人の冒険者が一人の冒険者の方に顔を向ける。


そこには首から上が無くなり、地面に膝を付いている仲間がいた。


「解ってはいたけど、やっぱり弱いな」


自身が持つ身体強化+蛇腹剣が持つ身体強化の能力を掛け合わせた動きに世紀末冒険者達は全く目で追う事が出来ていなかった。


「それと、そんなに俺にだけ意識を向けていて良いのか?」


敵は仲間を殺した少年だけでは無い。

その事を思い出した四人は慌ててザハークとミレアナの方を向く。


「注意が散漫過ぎですね」


「遅い」


ミレアナが放った二矢が脳天に突き刺さり、ザハークが二人の冒険者の頭を引き千切っていた。


「お疲れさん、二人共」


「汗一つかかず終わりましたね」


「所詮は自身より弱い者を囲む事しか出来ない弱者。暇つぶしにもなりません」


レベル差の影響もあったが、三人が本気で殺しにいった事で五人は自身が殺された事も分らずに視界が真っ暗になった。


「三人とも、大きな怪我は無いか?」


「は、はい。一応急所は第一に避けていたので」


ソウスケが見る限り確かに重傷といえる傷は無かったが、切り傷や火傷が多数確認できたので魔法袋からポーションを三つ取り出し、三人へ渡す。


「一応これを飲んどけ。お前ら一旦これから上に戻るだろ。だったらその途中で何があるかは分らないんだし、状態は万全にしておけ」


「わ、分りました」


ポーションを受け取った三人はその苦みに耐えながら一気に飲み干す。


「にしてもお前ら良く耐えたな。俺も盗賊を殺した時は最後まで吐かずに耐えたけど、戦いが終わったら一気に吐いた筈だ」


「「「「えっ・・・・・・おええええええええええ」」」


自分達が七人の冒険者からのリンチから助かった事で安堵していた三人だが、ソウスケの一言で気持ち悪さを思い出し、三人ともいきなり地面へぶちかました。


「・・・・・・俺もしかして余計な事言った?」


「えっと・・・・・・彼らの今後を考えれば必要な事だったかと」


ミレアナの言う事も間違ってはいないが、それでもソウスケは不要な一言を言ったかと思い、気まずそうにしている。

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