二百七十二話話が分かる

打撃戦を止めて空中に水の大剣を生み出したザハーク。


それに対しグラップラーフォレストコングは無暗に突っ込もうとはぜず、両手に木の槍を生み出す。


「ほぅ・・・・・・中々話が分かるな。それでは始めようか」


右手で水の大剣を操り、グラップラーフォレストコングの体を斬り刻もうとするザハークだが攻撃が届く前に二本の木槍が迫る。


無駄なダメージは負いたくないと考えているザハークは水の大剣で二本の木槍を切断する。

その繰り返しが五度ほど続いた後、木槍での攻撃が無駄だと悟ったグラップラーフォレストコングは手に木の大剣を作りだし、まずは空中に浮かぶ水の大剣を打ち消そうとする。


その行動に乗ったザハークはグラップラーフォレストコングの振り下ろされる大剣に真っ向から水の大剣をぶつける。

ザハークの想定では木の大剣を切断できるはずだったが、水の大剣と木の大剣がぶつかり合う前に水の刃が崩れ、あっさりと切断されてしまう。


崩された水の大剣を見てザハークは表情を変えず、冷静の状況を分析する。


(自分の水の大剣とグラップラーフォレストコングの木の大剣がぶつかり合えば木を切断できずとも半分は斬り込みは入れる事が出来た筈・・・・・・そういえば最初の一斉攻撃には木だけでは無く風も混ざっていたな)


なんとなく何故自分の大剣があっさりと切断されたのか解ったザハークはグラップラーフォレストコングの突進にどう対処するか迷う。


(崩れた水はまだ自分の支配下にあるから復元する事は出来る。しかしそれを使ってもう一度グラップラーフォレストコングを攻撃するより先に木の大剣が自分に届く間合いに来る。大剣の姿では無く槍や球体の姿に変えて放てばギリ間に合うか? ただ目の前のこいつならそれにも反応しそうだ)


水の槍が弾丸がグラップラーフォレストコングを襲い、それに敵が対処しようとすれば当然背が見える。

正に絶好の攻撃チャンスとなる。

ザハークが正拳中段突きでも放てば背骨を粉砕して勝負は終わるだろう。


(しかし背後からの一撃で終わらせてしまっては打撃戦から魔力を使った戦いに変えた意味が無い)


一先ず時間を稼ぐためにザハークはバックステップで後方へ跳び、水魔法を発動させる。


「・・・・・・ウォーターマシンガン」


ソウスケがウォーターバレットの強化版として考えついた魔法を使用するザハーク。

生み出された水球から完全に無視できるほど威力が弱くはない水の弾丸が連続して放たれる。


数発喰らって警戒を強めたグラップラーフォレストコングは水球が無くなるまで木の大剣を盾にして凌ぎきる事にした。


グラップラーフォレストコングが動けない隙にザハークは崩れた水の大剣の残骸を再形成する。

残骸から新し生まれ変わった姿は水の燕。


「・・・・・・ウォーターバード、でいいのか?」


即席で考えた魔法の名前に違和感を持ちながらもザハークはグラップラーフォレストコングの背後に向かって水の燕を放つ。


ザハークはこの一撃で倒せるとは思っていないが、多少の出血量は期待できるだろうと考えていた。

痛覚耐性を持っているとはいえ、血を流し続ければいずれ大量出血で倒れる。

そういう勝ち方もありだろうとザハークは考えていた。


しかし後少しで水の燕が届く瞬間、グラップラーフォレストコングの背中から木の板・・・・・・ではなく、鎧が現れた。木の鎧は体を全て覆うのではなく、上半身の半分より上だけに現れた。


結果、木の鎧に水の燕が激突したが、木を抉るだけでグラップラーフォレストコングに鋭い衝撃こそ与えど、背中を傷つける事は無かった。

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