二百六十話魔力との相性

ソウスケの斬撃を避け、ミレアナが放つ矢を弾き、ザハークの拳を躱してカウンターを放つ。

三人と戦い続けるフォルスは間に休憩を挟みながら戦っているが、着実に疲労が溜まっていた。


それでも疲れを言い訳にせず視野を広げ、足に拳や膝と肘、裏拳や頭突きを使って少しでも攻撃を当てようと動き続ける。

たった数日とはいえ、ソウスケとの訓練の成果がでており三人に多少の傷を負わす事に成功する。


中でも風の魔力を脚に纏いながら放った前蹴り。

足先から放たれた迫る風の刺突。


まだ一度も見せた事が無かったフォルスの奥の手を見たソウスケは本能的に危険だと感じ、自身が持つ硬化のスキルだけでなく、蛇腹剣がモンスターを喰らった事で得た竜鱗を反射的に使ってしまった。


幸い竜鱗を使ったのは攻撃が当たる一瞬だったのでフォルスにソウスケの秘密がばれる事は無かった。

だが攻撃を両腕でクロスして防いだソウスケは笑みを浮かべながら冷や汗をかき、それを見ていたミレアナやザハークもその威力に目を見開いて驚く。


自身がとっておきと隠していた攻撃を防いで無傷だったソウスケを見てフォルスは悔しそうな表情を浮かべたが、硬化と竜鱗のスキルを発動していなかったらと考えたソウスケは内心で焦りまくっていた。


線と点での脚技を覚えたフォルスの攻撃は殺傷能力に置いてソウスケ達ですら油断出来ない領域に達していた。


「よし、今日はここまでだ。ちょっと終わる時間が早いかもしれないが、後の予定は考えれば妥当だろう」


「そ、そうですか。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・あ、有難うございました」


体力が殆ど尽きてしまったフォルスはその場に大の字で倒れ込む。

そばでソウスケ達の摸擬戦を見ていたメイドが慌ててタオルを持ち、フォルスの元へ向かう。


「いやぁ・・・・・・なぁ、フォルスの風の魔力を纏った線と点の脚技ヤバくないか?」


「ヤバいですね」


「十分にヤバいかと」


三者同様に意見が一緒だった。

実際に攻撃を防御したのはソウスケだけだが、それでも真面に喰らっては駄目だ。

それがフォルスの攻撃に対する三人の認識。


「随分と風の魔力と相性が良いみたいですね」


「相性が良い・・・・・・それは風の精霊に好かれてるとかそういう話か?」


「いえ、そうではありません。個人によって得意不得意な魔法はあります。ソウスケさんは例外ですが」


自身が神から貰ったスキルの数々を思い出し、確かに例外だとソウスケは苦笑いになりながら頷いた。

名前は出されなかったが、他のモンスターには無い学習能力で多くのスキルを得ているザハークは自分も同じなのではと首を傾げている。


「ただ、それとはまた別に魔力の相性の差というのもあります。ソウスケさんの場合は・・・・・・もしかしたら水の魔力と相性が良いのかもしれませんね」


「水って・・・・・・あぁ、そういうことか。それと繋がってる可能性はあるか。とりあえず、フォルスは風の魔力と相性が良いから他の人と同じ風の魔力の扱い方でも威力や規模が違うって事で良いんだな」


改めてそれを考えると自信がフォルスに与えた戦い方に都合が良いとソウスケは思えた。


(ダンジョン内でフォルスが身体強化のスキルを使っている時間や風の魔力を使用した時の大まかな消費魔力を計算して割に合わないと感じたのはそういう事か)


ダンジョン内で感じていた疑問が解けたソウスケの表情はスッキリしていた。


「込めた魔力が少量であっても規模が多くなり、威力が増す。そもそも魔法を使ってる訳じゃない・・・・・・魔技って名前で良いか。魔技は消費魔力が多くない。フォルスにとっても有難い事実だな」


「相性は鍛えてどうこう出来るものでは無いですからね。ソウスケさんも水の魔力でその魔技? を考えてみてはどうですか?」


「・・・・・・既に魔法でありそうな気がするけど、それは置いといて水の魔力と相性と良いなら考えて損は無いか」


楽しみが増えた事で表情が緩みながらソウスケはフォルスに手招きをし、やって来たフォルスに耳打ちをする。


「って事だから、しっかりと飯は食べて体力を回復させておけよ」


「はい! いつも以上に夕食を食べます!!」


(それじゃ腹を壊してしまうのでは?)

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