二百五十九話終わった後の褒美

「さて、今日は俺達三人と摸擬戦の繰り返しだ。ちなみに今回はザハークがいるから俺は長剣担当だ」


「わ、分りました。よろしくお願いします!!」


気合いの入った返事を返すフォルスだが、目の前に立つソウスケとミレアナにザハークの圧力に自然と足が震えていた。

それを見たソウスケは仕方ないと思う苦笑いしながらフォルスの緊張を和らげようとする。


「安心しろ。二人共しっかりと手加減するから。なっ」


「ええ。勿論フォルス君が怪我をしない様に加減をします」


「・・・・・・善処します」


「えっ!!??」


ザハークの嘘か本当なのか分らない表情から発せられた言葉を聞いたフォルスは驚きの声を上げ、見て解る程に表情に不安が広がっていく。


本来のオーガよりは鬼人族に近い体型のザハークだが、それでも一般的な鬼人族と比べて大きい。

そんなザハークが速さや腕力の調整をミスしたらどうなるのか・・・・・・そんな事考えなくてもフォルスは一瞬でイメージ出来てしまった。


「ザハーク、フォルスを揶揄うのは止めてやれ。せっかく俺が少しでも緊張を和らげようとしたのに」


「申し訳ありません、冗談の一つでも言えば気が和らぐかと思ったので」


「悪くない考えだが、今のフォルスにはきつい冗談だ。フォルス。ザハークの言葉は嘘でしっかりと力の制御は出来るから安心しろ」


「は、はい!」


安心しろ、そう言われても中々肩の力を抜けない程フォルスは緊張していた。

どうすればいいものか。そう考えたソウスケは夕方まで摸擬戦を終えた後に褒美でもあれば良い感じに緊張感が抜け、やる気が出るのではと考えた。


「フォルス、・・・・・・・・・・・・って予定している」


「えっ!? ・・・・・・そ、それは本当ですか?」


「おう、本当だ。だからあまりこれからの摸擬戦で緊張し過ぎて下手な怪我したら終わった後の予定は中止だ。だから肩の力を抜いて二日前と同じように俺に掛かって来い」


「分りました!!!」


表情にやる気が戻って来たフォルスを見てソウスケは我ながらナイスな案だと自分を褒めた。


「ソウスケさん、フォルスへ何を話したのですか?」


「思春期の男にとってやる気が出る予定だ。ミレアナは聞こえていたろ」


「・・・・・・はい。私は女なのであまり解りませんが、ソウスケさんの言う通りフォルス君の表情を見れば結果は一目瞭然かと」


フォルスの表情はワクワクした表情から徐々に戦闘時の目へと変わっていく。


「さて、まず一戦目は俺からだ」


「スゥーーー・・・・・・ハァーーーーー・・・・・・よろしくお願いします!!!!!」


「良い返事だ!!」


それが合図となり、ソウスケの方からフォルスへと仕掛けた。

初日とは違って初っ端から攻めるソウスケ。勿論手加減しての攻撃。


相手の全体を見る事が出来るようになったフォルスには視える速さ。

斬撃を冷静に躱してカウンターを放とうとするが、それを読んでいたようにソウスケが斬撃から蹴りを繋ぐ。


一撃で終わらず連撃で続く攻撃に対し、フォルスは無理に焦って反撃を狙わずに躱し、防ぎ、反撃の機会を待つ。


その判断にソウスケは悪くないと思いそれから反撃の隙を与えずにフォルスが反応出来るギリギリの速さで攻撃を続ける。


二分程が過ぎ、ここらで交代だと言わんばかりにソウスケは後ろへ大きく跳ぶ。

そして手招きをして掛かって来いと挑発する。


手招きに対してフォルスは自分が下に見られている、侮られている等は感情は湧かない。

ただ単純に攻守が交代したとだけ考えてもう一度深呼吸をし、身体強化のスキルを使って走り出す。

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