二百四十七話湧き出て来るアイデア

「それにしても、一階層から十階層までのモンスターはスパイロードだけで倒せそうですね」


「・・・・・・だな」


「どうかしましたか?」


「い、いや。何でもないよ」


一日休息してから再びダンジョンに潜り始めたソウスケ達は採集依頼を受け、その依頼内容である果実の採集をするために今は殆ど用のない一階層から十階層の間を進んでいた。


そんな中、ソウスケは自分にとってあまりスパイロードを使う意味が無い事に気が付いた。


(蛇腹剣に蜘蛛系のモンスターを喰らわせていた事で、スパイロードを使わなくても似たような事は出来るんだよな)


寧ろ魔力を消費すればいくらでも糸を生やす事が出来、糸に火や雷を纏わせる事も可能であった。


(まぁ、一目がある場所で蛇腹剣の能力はそこまで多く使えないから、そういった場面ではスパイロードの方が使い勝手が良さそうか。それにこれから俺が出来るような糸に属性魔力を込められるようにスパイロードを改良すればいいか)


自分が造った作品が自分にとっては意味が無いのではと思っていたソウスケだが、しっかりと考えればそうでも無く、新たな改良型の案も浮かんだので顔から沈んだ表情が消えた。


「顔色が良くなったみたいですが、何か良い事でも浮かんだのですか?」


「ああ、このスパイロードの改良型を浮かんでな。まぁ・・・・・・考えてるほど改良型って言えるのかは分からないけど、それでも攻撃面では今よりも性能が上がる筈だ」


「糸を増やしたり糸に属性を付けたりといったとこですか?」


ミレアナの予想の中にはソウスケが考えていなかった内容があり、また頭の中でアイデアが広がった。


「糸を増やすって案は無かったな。二本・・・・・・いや、三本がベストか。一応一本、二本、三本で分けて扱える方が良いよな。もう少し自分の感覚だよりになってしまうけど、魔力の消費量とか事前に計算しておいた方がいいかもしれないな」


属性を付与するにしても、単に攻撃魔法の属性を付与するのではなく、糸の重量を変えたり魔力を吸い取る効果を付与する事も不可能では無い。


(いいなぁ・・・・・・アイデアが溢れて来た。でも、そういった事を実現するにはやっぱりそれなりに上等なモンスターの素材が無いとな)


しかし自分の歳ならまだ焦る必要は無いと思いソウスケは生き急ごうとは考えなかった。


「ソウスケさん、左斜めの方で数人の冒険者? がモンスターに襲われていますがどう致しますか? 状況はかなり劣勢だと思われます」


ミレアナの言葉にソウスケは何故に疑問形なのだと思ったが、それも直ぐに理解出来た。


(・・・・・・雰囲気は俺が言える事じゃないが、冒険者に成り立てのそれと変わらない。でも、装備している武器や防具に関してはルーキーが持つ物より上等だってのは解る。見た感じ貴族の子供か?)


何故貴族の子供が冒険者をやっているのかは謎だったが、明らかに劣勢だったためソウスケ達は即座に戦いに介入した。


「悪いが勝手に手を出させて貰うぞ!!!」


襲われている冒険者の数は三人。

それに対して相手のモンスターの数は五体。


ブラウンウルフの上にまたがるのはコボルト。


モンスターの上にモンスターが騎乗する。そんな光景にソウスケは内心で驚きはするが、直ぐにその足を奪う。


「おらっ!!!!」


左手に持っていた壺から二つの小石を取り出し、ブラウンウルフに向かって投げつける。


「はっ!!!!」


ミレアナは弓を構えず右手に魔力の矢を生み出し投擲する。


「ふんっ!!!」


周辺にあった手頃な大石を拾い、ザハークはそれを無造作に投げつける。


三人の攻撃により五体のブラウンウルフと一体のコボルトが死亡し、二体のコボルトがブラウンウルフから転げ落ちた拍子に自身の武器により軽傷を負う。


それからはほんの数秒で戦いが終わり、結果として貴族の子供らしき冒険者達は大きな怪我を負う事無く済んだ。

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