二百四十五話どれぐらいの価値があるのか

ミレアナとザハークのスパイロードを造り終えたソウスケは早速試していたいと思ったが、その日は一日体を休める事にして後日ダンジョンに向かい、直ぐに十階層へと転移した。


そしてスパイロードを試す事三十分。三人は完璧に使いこなしていた。

最初こそまだスパイロードの糸を使っての移動に戸惑い、無理やり体を動かして怪我を回避していたが、扱いに慣れて来た三人は森の中を自由自在に動き回っている。


スパイロードを使うにあたって消費する魔力の動作は糸を伸ばす、粘着する部分を変化させるの二つだけなので消費魔力の量が少ない。

なので三人は一時間程動き回っていてもそこまで疲れてはいない。


「やばい、本当に楽しいなこの感覚。ス〇イダーマンやエ〇ンはこんな景色を見ながら移動していたんな」


「ソウスケさんの言うスパ〇ダーマンや〇レンがどういった者なのかは分かりませんが、これは爽快な気分です」


「扱いを極めれば森や障害物の多い場所であれば大いに役立つマジックアイテムです。ソウスケさんはこれを商品としてお売りになるのですか?」


スパイロードを商品として売り出す。

その事はソウスケもチラッと考えていた。


娯楽の商品として、構造としてはマジックアイテム呼べなくもないエアーホッケーは白金貨五枚という値段で第一号は買い取られた。


エアーホッケーは娯楽の商品としてトーラス商会の会長であるトーラスが値段を決めた為、特に異論は無い。


だが、自分が造ったスパイロードにどの程度の価値があるかは予測できない。

そう低く無いだろうとソウスケは思いたかった。


(でも、これも商品の特許的な物を取ったら俺にだけ依頼が来るんだよな・・・・・・それは面倒だ)


スパイロードに必要素材はモンスターの糸にそこそこ頑丈な皮に木系等のモンスターの木があれば造れるので、今滞在している街のダンジョンでそういったモンスター倒しに倒せば長い期間心配は無い。


ただあまり自分の時間を金が手に入るとはいえ潰したくはないとソウスケは思っている。


「・・・・・・こいつは商品として売らない。俺に造ってくれと頼み、俺が納得できる金を用意したら造る。そうしようと思う」


そう言いながら背後から襲い掛かって来たウッドモンキーにスパイロードを向けて糸を発射する。


「ウキャッ!!??」


背後から襲う事に成功したウッドモンキーは油断しきっており、いきなりの攻撃に対処できなかった。

ギリギリ手で糸が顔にぶつかるのを阻止したが、スパイロードの糸の対処法としては正しくは無い。


「あらよっと」


発射口から放たれた糸を戻しながら一本背負いの要領でウッドモンキーを地面に叩き付ける。


振り回されたウッドモンキーに手を地面に付いて耐えられるほどの腕力は無く、そのまま頭ごと叩き潰されてしまう。


同じようにミレアナとザハークに襲い掛かって来たウッドモンキーも複数いたが、ソウスケと同様の倒し方で体を木や地面に叩き付けられて絶命した。


「やはり攻撃性も多少はありますね。ただ・・・・・・糸の耐久性を考えると、ウッドコングなどが相手になれば話は変わってきますね」


「それは糸の価値によって変わる話だから俺があまり介入できる部分では無いな。今のスパイロードを使う冒険者のランクは一番下からD・・・・・・いや、Cランクの冒険者達も補助として買おうとは思うか?」


スパイロードには活用出来る場面が多くあるが、自身としては低ランクの冒険者が持つようなマジックアイテムでは無いと考える。


(阿呆な冒険者が無理矢理奪い取るとかしそうだからな。ふぅーーー・・・・・・やっぱり売るならある程度金を持っていて最低Dランク以上の冒険者からが良さそうだな)


もしスパイロードを自分に売って欲しいと頼んできた冒険者に売る層を決めたソウスケは直ぐに地上へ戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る