二百十四話興味を引いたゴブリン

四階層の途中から十階層意向を目指し走っているソウスケ達の右前方に複数のモンスターと戦っている同業者を見つけた。


戦況はモンスターの方が冒険者を押している。

複数のゴブリンにその上位種、統率が取れたゴブリンが冒険者達をじわじわと追い詰めている。


「・・・・・・ミレアナ、ありゃ同業者の方に勝ち目はありそうか?」


「おそらくですが六対四・・・・・・いや、七対三で全滅するかと」


「七対三か。それは中々に不味いな」


冒険者達を追い詰めるゴブリンリーダー率いるゴブリン達。

そのゴブリン達の中で一際目立つゴブリンがいた。


(あいつ・・・・・・本当にゴブリンか? どう考えてもゴブリンの強さを超えているだろ。でも体の大きさからしてゴブリンリーダーよりは小さい。でもゴブリンよりは大きいか? 取りあえず戦い方は普通のゴブリンのそれじゃないな)


おそらく冒険者から奪ったであろう剣で斬りかかり、体術で接近戦を行う。

そして遠距離からはソウスケが最近多用しているそこら辺に落ちている石を使っての投擲。


「ミレアナ、取りあえずあの冒険者達に助けがいるかどうか聞いてくれ。そして助けが必要だと言えばこの場から遠ざけるんだ。そんであの異様に強いゴブリンとその上位種を殺してくれ」


「分かりました。あのゴブリンだけを残して殲滅します」


即座に動き出したミレアナは大声で冒険者達に助けがいるのかどうか確認を取る。

複数のゴブリンとその上位種に追い詰められていた冒険者達は意味のないプライドを張る事無く、ミレアナに助けを求める。


そして冒険者達が走り出したのを確認したミレアナは風の刃を多数生み出す。


「ウィンドカッター」


詠唱を破棄して放たれた風の刃はソウスケの指示通りに通常のゴブリンの枠には収まらない強さを持つゴブリンのみ残し、後のゴブリン達の首を全て跳ね飛ばした。


唯一上位種であるゴブリンリーダーのみウィンドカッターに反応するが、完全に躱しきる事は出来ず首筋を大きく切られてそのまま地面に倒れ込む。


自分以外の仲間が全員殺られた事にゴブリンは驚きを隠せないでいる。

周囲を見渡すが仲間は全員体と頭がサヨナラしている。


「ゴブウゥゥゥ・・・・・・」


「おう、中々の面構えって奴だな。お前本当に普通のゴブリンか?」


自分の目の前に立つ人間は喋りながら自分に近づいてくる。

仲間を殺したのは男の隣に立つ女だとゴブリンも分かっているのだが、目の前にいる人間に対して微塵も気を緩める事は出来なかった。


「まぁ、そんな事は良いか。言葉が通じるかどうかは分からないけど一応言っとくな。俺の従魔にならないか?」


敵意が無い目でこちらを見て、手を差し出す人間にゴブリンは混乱する。

何故自分の仲間を殺した女の仲間が全く敵意の無い目で自分を見ているのか、そして何故手を差し伸べて来るのかゴブリンは理解出来ない。理解出来ないが人間の目にどういった意図があるのか過去の経験から思い出す。


人間の目は自分に一緒に行動しようと誘って来た仲間の目に似ていた。

おそらくそういう事なのだろう。確かにどう足掻いても勝ち目のない目の前に人間と戦っても無駄死にするだけ。

だが、それでも直に感じたいとゴブリンは思った。見ただけで勝ち目がないと悟らせる人間の実力を。


「・・・・・・なるほど、従魔にするなら俺と戦って勝てという訳か。いいぞ」


ソウスケは左半身を前に出して構える。

特に意味がある訳では無い。ただ、単純にこの形から動いた方が感覚的に良好というだけ。


ソウスケが構えたのを確認したゴブリンも剣を握る力を強め、戦闘態勢を取る。

まず最初に仕掛けたのはどう足掻いても結果は自分の負けだと解っているゴブリンから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る