二百十三話初見殺し
グリーンワームの解体も終わり、夕食と風呂も終えた二人はソファーにのんびりと寛ぎながら今日の出来事について話し合っていた。
「やっぱ四階層辺りには珍しいモンスターはいないな。ソードラビットも見ないし」
それほど強いという訳では無いが、それでもゴブリンやコボルトにファットボアといったFランクのモンスターに比べれば実力は上な為、出来れば体が鈍らない様にするために戦う相手には丁度良いかとソウスケは考えていた。
「モンスターとの戦闘は全てソウスケの石での投擲で終わりましたからね。まぁ・・・・・・それほどソウスケさんの腕力が有るという事ですが。確かにコボルトの上位種の牙や爪で造られた短剣や、コボルトキングの素材を材料にしたグラディウスを使わなければいけない程のモンスターは現れていません」
一般的な冒険者ならばモンスターを投擲で倒すといった手段を取らないのだが、今のソウスケの実力ならば石の投擲だけ低ランクのモンスターは倒す事が出来る。
「もしかしたら十階層以降、そうでなくても八、九階層辺りなら石では倒せないモンスター、もしくは俺の投擲を避けるモンスターがいても可笑しくは無いか。投擲っていっても鉱石を使った鉄球とかじゃなく、そこら辺に落ちている石だからな。あっ、でもファースキャットってモンスターには俺の投擲が当たる気がしなかったな」
ソウスケは体の大きさは通常の猫より二回り程大きいが、初速の速さは目を見張るものがあった猫タイプのモンスターを思い出す。
(別に強くは・・・・・・いや、ルーキーにとってあの俊敏さは厄介なものかもしれないな。それはネコ科全体に言える特性かもしれないけど。それに爪が異様に伸びていた。常時あんな長さだったら邪魔になる筈だ。おそらく俺とミレアナを倒す為に瞬間的に爪を伸ばしたって見解が正しそうだな)
そこでソウスケは昼間に倒したグリーンワームの事を思い出す。
(あいつもルーキーにとっては毒を使うみたいだし、厄介なモンスターには変わりないのかもしれないな。それに毒系のスキルを持っているなら蛇腹剣に喰らわせるのもありだよな・・・・・・こんど見つけたらそれ様に取っておくとするか)
蛇腹剣を使う使わないではソウスケの手札の数は大きく変わってくる。
それ故に自身の趣味と言える物作りや錬金術、将来的にはやってみたいと考えている鍛冶の材料の為にモンスターの素材は取っておきたいが、蛇腹剣を装備する事によって扱う事が出来るスキルを増やしたいのも事実。
「初見では殺されはせずと傷を負わされる可能性は高いでしょう。個体によっては爪の切れ味を変わってきます。ファースキャットの上位種ともなれば戦力は大きく増すかと」
「そりゃそうだろうな・・・・・・というか、上位種って事は体が大きくなる可能性もあるんだろう」
ソウスケは今まで見て来たゴブリンやオークにコボルト、リザードマンといった人型のモンスターの通常種と上位種を比べた結果、そういった共通点があるのだと思い込んでいた。
「そうなればもはやキャットじゃなくてウルフな気がするな」
「・・・・・・大きさに関しては確かにそうかもしれませんね。ただやはりウルフ系のモンスターは爪を用いた攻撃も行いますが、やはり咬みつきを多用します。それにくらべてキャット系のモンスター牙を使った攻撃は殆ど行わず、爪での攻撃が主です」
「なるほど・・・・・・同じネコ科でも攻撃の種類が違うって訳か。・・・・・・口から火や水のブレスを吐くモンスターとかもいるのか?」
「そういったモンスターもいるみたいですよ。私の故郷に風球を口から繰り出し、足からは風の斬撃も突き? を放つフォレストウルフというモンスターがいました。ちなみにランクはCです」
ミレアナの説明にソウスケは納得がいった表情を浮かべ、ウンウンと頷く。
フォレストウルフの大きさにもよるかもしれないが、それだけの手札が合ってランクがDより下では、ソウスケにとっては正直なところどうでも良いが、ランクがEやDの冒険者にとっては完全にランクが上のモンスターじゃないかと、悲鳴を上げたくなる実力を持っている。
「十階層以降は森の階層なわけだし、そのフォレストウルフに遭遇するかもしれないな」
美味しい獲物がいるかもしれないと分かり、ソウスケの口を自然と笑みを浮かべている。
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