二百七話相性が良い

「ミレアナは何か欲しいスキルはあるか」


「そうですねぇ・・・・・・盾術のスキルは持ってないですが私の戦い方では精々円型の小盾を使うぐらいなので、正直持っていても意味が無いですね。強いて言えばですが、槍術のスキルですかね」


ミレアナ自身、接近戦が出来ない訳では無かったが、主に使う武器は短剣なのでリーチが短い。

なので接近戦でも広範囲の攻撃を行う事が出来るスキルが欲しかった。


「分かった。このスキルの書はミレアナが使ってくれ。さて、俺はどれを使おうか・・・・・・うん、こいつを使うか」


「なるほど、それは確かにソウスケさんの戦法の一つと相性が良いですね。私も弓を使う時はそのスキルを

補助として使っています」


ソウスケが手に取ったのは命中を習得できるスキルの書。

投擲だけで倒せる相手にはなるべく石や短剣を使って倒すソウスケにとって、ミレアナと同様に補助として組み合わせる事が出来るスキルだった。


「魔力操作、盾術、脚力強化、風魔法、視力強化は取っておこう」


「それだけあれば何かあった時の交渉材料に使えるかもしれませんね」


「・・・・・・そうかもしれないな。普通の冒険者だと多分欲しいスキルだったらそのまま自分で使うだろうし、特に必要が無かったら売って金に換えるだろうからな」


ソウスケは自身が普通の冒険者では無い事を自覚している。

なので普通の冒険者がどういった行動を取るのかもある程度予想できた。


「まだ日は沈んでないな・・・・・・少し街を見て回るか?」


「そうですね。特徴のあるダンジョンを有する街ですからもしかしたら何か良い発見があるかもしれませんね」


「そうと決まれば直ぐに行くぞ」


アイテムボックスの中へ出した宝箱の中身をしまい、ソウスケ達は宿を出て街の散策へ向かう。




「・・・・・・・・・・・・価値がある、それは分かるけどなんて言えば良いんだろうな。それ以外の事はいまいち解らん。ミレアナから見てここら辺の家具はどう見える?」


「ソウスケさんの言う通りまず価値があります。作品一つで製作者の腕の高さが一目で分かります。基本的には豪商と呼べる商人や貴族向けの商品ですね」


「確かにそうだな。俺はあんまり飾りとかは気にしないタイプだからな。実用性が有れば文句は無い」


ある程度の飾りであればソウスケもあって良いと思うが、あまりゴテゴテした装飾は好みでは無かった。


「その割にはソウスケさん、モンスターのフィギュアには結構細部まで拘りますよね」


「それはそうだろ。あれは何かに使うとかそういうもんじゃなく、見て楽しむ物だからな」


ソウスケの言いたい事がなんとなく解ったミレアナは小さく、なるほどと呟く。


「ところで、店内に置いてある家具は何か買うんですか?」


「いや、俺が持っていたところでな・・・・・・拠点となる家を買うとかなら話は別だが、特に欲しいとは思わない。ただこういった物を見るのは嫌いじゃないからな。良い暇つぶしになった」


「・・・・・・一部の方々が聞けば怒りだしそうな言葉ですね」


ソウスケ達の目の前にある作品を作った人物はこの街ではかなり有名な職人であり、貴族の中でも製作者が作った家具のファンがいる為、ミレアナの言う事はあまり間違ってもいない。


「そう言われてもな、俺は冒険者だからそういった美的センスがある訳でもないんだ。そこら辺は解って貰いたいな」


「・・・・・・まぁ、見た目が冒険者だからこそ入る時に一悶着あったんですけどね」


二人が家具店に入った直後、店員がやって来てここはソウスケ達が来るような場所では無いと言って店から追い出そうとした。

しかしソウスケはポケットから店員だけに見える様に白金貨を見せた。

その白金貨が本物であると瞬時に分かった店員は見事な掌返しを披露し、他の店員達にソウスケとミレアナがこの店の客にふさわしいと伝え周った。


「人を見た目でしか判断できない店員だったけど、話は通じる奴だったから良かったよ」


「以前にも似たような事があったんですか?」


「まぁな。その時も前回と同じように解決したんだよ。・・・・・・要らない誤解を生んだけどな。取りあえず店から出て他の店も周ろう」


「分かりました」


要らない誤解の内容を気にしながらもミレアナはソウスケの後に付いて行く。

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