二百六話訓練をすっ飛ばして

「ソウスケさん、ソウスケさんが以前ダンジョンを攻略した際に手に入れた宝箱は開けたんですか?」


「・・・・・・あっ、いつか開けようって思ったまま放置していたな。最下層のボスを倒した後、地上に戻る途中に見つけた宝箱は片っ端からアイテムボックスの中に入れていったからな」


ソウスケは最下層のボスのワイバーンを倒した後に現れた宝箱は開けたが、それ以外の宝箱は開けずにずっとアイテムボックスの中に眠っている。


「それならば今ここで開錠して中身を確認しませんか。もしかしたら今回のダンジョンで使える道具が入ってるかもしれませんし」


「それもそうだな。それじゃちょっとずつ開けていくか」


「えっと、ソウスケさんは何か開錠するのに必要な小道具は持っていますか?」


「いや、俺はそう言うの持ってないぞ」


アイテムボックスの中から取り出した宝箱の内の一つの錠に手を当て、軽く電気が流れると開錠される。


「俺そういうのよく分からなかったからさ、宝箱の錠って鉄だから雷の魔力を応用すれば何とか出来るんじゃないのかと思って」


開錠という主にダンジョン内でシーフの役割を担当する物が覚える必須のスキルを使い、宝箱にかかっている罠を発動させずに中身を手に入れる事が出来る。


ミレアナも開錠のスキルを持っており、レベルが五まで上がっているためそこまで高価では無い宝箱であれば錠に魔力を当てて脳内でパズルを解くような感覚で開錠する事が出来るのだが、ソウスケが言うやり方は今まで一切聞いた事が無かった。


「えっと・・・・・・それはどんな宝箱でも簡単に開錠する事が出来るのですか?」


「いいや、別に全部の宝箱が簡単って訳じゃ無いよ。何というか・・・・・・雷の魔力を当てて錠の中に存在する障害物を抜けて一番奥のボタンを押す、ってイメージでやってるんだ。だから宝箱によって簡単な物もあれば難しい物もある。今開けた宝箱は結構簡単だったから直ぐに終わったんだよ」


ソウスケ流の開錠のやり方を聞いたミレアナは、自分が知っているやり方とそこまで違いが無い事が分かり、頭が混乱する事は無かった。


(でもソウスケさんのやり方だと、まず開錠を覚えるまでに小道具を使ってスキル無しで開錠する訓練期間が要らず、スキルを得て効率が上がったとしても手を細かに動かす必要が無いって事ですよね・・・・・・やっぱりそれはそれでずるいというか、反則な気がしますね)


果たして雷の魔力を使って開錠するやり方がソウスケにしか出来ないのかそうでないのかミレアナには分からないが、取りあえず羨ましい技術であるとミレアナは感じた。



そして二人は一時間程で全ての宝箱を開錠し終えた。


「鉄貨、銅貨、銀貨、金貨が多数・・・・・・流石に白金貨は無かったな。一般的な武器に防具。それとマジックアイテムの武器も少々。この魔力を充電すれば五~六時間光るランプってのは利便性が高そうだ。それとスキルの書が七冊。槍術、魔力操作、盾術、脚力強化、風魔法、命中、視力強化って所か」


使えそうな物あれば使えなさそうな物ある。ランクの低い武器などはソウスケにとっては投擲するのにちょうど良いため、無駄な物は無かった。


「使えそうなマジックアイテムがちらほら。この長靴なんて雨が降っている時や地面がぬかるんでいる時に使えそうだな」


ソウスケが手に取ったのはランク四のマジックアイテム、水弾きの長靴。

名の通り水をはじく為、長靴の中が濡れる事は無い。サイズも自動調整されて誰でも履く事が出来る。

そして速度上昇と体幹強化の効果が付与されている。


「速度上昇の効果が付与されているのは一般的ですけど、体幹強化が付与されているのは珍しいですね」


「そうなんだ。後は切れ味強化のロングソード、相手を一定の確率で麻痺状態に出来る短剣、魔力の盾を張る事が出来る指輪。使えなくはないけどダンジョンで使う必要は無いものだな。それで・・・・・・このスキルの書はどうしようか?」


ソウスケは悩ましい表情をしながら七つのスキルの書を眺める。

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