二百一話贅沢と緊張

「ふぅーーー、ダンジョンの中でこうもゆっくり出来るのは良いもんだな」


「そうですね。ダンジョンの中でこんなに気を抜いていても良いのかと少し不安になりますが、今日の疲れが明日に残る事は無さそうです」


五階層の探索を終え、四分の一程戻った地点で二人はテントの中でのんびりと寛いでいる。

温かい夕食を食べ、温かい風呂に入って一日の疲れを取りソファーへ座る。

この階層でそんな贅沢をしているのはソウスケ達しかおらず、そんな事をしているとバレればルーキー達からは物凄い妬みや嫉妬を買うだろう。


「この階層にいる魔物なら大丈夫な筈だ。まぁ、中層や下層って呼ばれる場所まで行ったらこのマジックアイテムのテントの効果が通用するか分からないけどな。それを考えると少し対策を練った方が良いかもしれないな。・・・・・・ぶっちゃけセーフティーポイントを見つけるのが手っ取り早いんだけどな」


「確かにその通りですね。セーフティーポイントであればモンスターが襲って来る事はまずないですからね。ただその代わり同業者を警戒しなければならないかと」


「あぁ・・・・・・それもそうだな」


同業者に気を付けなければならない。その言葉聞いてソウスケはミレアナの顔をじーっと見る。

いきなりソウスケに顔をじーっとみられるミレアナは困った表情になり、小さく首を横に傾げた。


「えっと、顔に何かついていますか?」


「いや、その同業者に襲われる原因になりそうなほど綺麗な顔してるな~~~って思ってさ」


「ッ!!!! そ、そうですか・・・・・・・・あ、有難うございます」


顔を下に向けながら顔どころか耳まで赤くしたミレアナを見て、ソウスケも釣られて顔が赤くなってしまった。


「っと・・・・・・いきなりくさいセリフ吐いて悪かったな」


「い、いえ! そんな、寧ろそう言って頂けて嬉しかったです」


「そ、そうか・・・・・・・・・・・・」


互いに顔を赤くさせ顔を合わせない二人に少しの間沈黙が訪れる。


(・・・・・・な、なんで俺まで緊張しなきゃならないんだ!? 俺としては普通に思った事を言っただけなんだけどな)


特別他意があって言った訳では無く、本当に思った事を口に出して伝えただけなのだが、ソウスケの心臓が自身にも分かるほど跳ねていた。


「・・・・・・よし、取りあえず今日はもう明日に備えて寝るぞ」


「わ、分かりました! ゆっくりと寝ましょう」


ぎこちない動きでベットに入り、明かりを消して目を閉じる。

だが、二人共一つのベッドでなく分かれて寝ているのにも関わらず、中々寝付けないでいた。




翌朝、目が覚めベッドから降りた二人は少しの間顔を合わせると何故か緊張してしまうため、お互いに顔を合わせない様にしていた。


しかしこれから地上に戻る事を考え、このままではいけないと思い気を引き締め直し、軽めの準備運動をする。


「っし、これから地上にダッシュで向かう。途中途中で休憩するけど基本走りっぱなしだ。それと身体強化のスキルは使っていいけど、属性魔法で足の速さを強化するのは使うなよ」


「了解です。身体強化の効果を得る属性魔法を使うと目立ちますからね」


「そう言う事だ。そんじゃ行くぞ」




一気に地上へと向かうソウスケ達は、そばを通り過ぎるモンスターでさえ追い付く事は不可能な速さで走っていた。

それでも直ぐに地上に戻れない事を考えると、一層一層のとてつもない広さが分かる。


途中でモンスターと戦っている冒険者のパーティーを数回ほど二人は見かけるが、上層という事もあり苦戦をしているパーティーは殆ど見つからなかったので手助けする事は無かった。


そして二人は特に何も問題なく地上へ帰還する事に成功。

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