百八十三話何かしておかないと

「敵襲!!! ゴブリンが七体だ!!!」


外から声に反応し、馬車の中にいたソウスケ達は即座に外へ飛び出す。

報告通り数は七体。上位種はいない。

三つのパーティーの実力を考えれば余程の事が無い限り負ける相手では無い。


ソウスケが動かずとも戦いは一分もしない内に終わる。

だがここで動いていおかないと、後で何か言われるかもしれないと反射的に思ったソウスケは近くに落ちていた小石を拾い、ゴブリンの額を狙って投げつける。


放たれた小石は一直線に飛んでいき、ゴブリンの額を見事に貫通する。


ソウスケの動きに、自分の主人が考えている事を何となく勘付いたミレアナはコボルトジェネラルの素材で作られた物では無く、ソウスケが盗賊のアジトを潰した時に得たいくらでも変えの効く短剣を投げる。


これもソウスケの放った小石同様に一直線に飛び、ゴブリンの額に突き刺さる。


額を貫かれたゴブリンと短剣が額に突き刺さったゴブリンは力なく地面に倒れ伏す。


そして三十秒もしない内に他のゴブリンも倒され、何一つ被害が及ぶ事無く事は終わった。


「やるじゃないかソウスケ君。ゴブリンとはいえ小石を投げて倒してしまうなんて。結構投擲のスキルは鍛えているのかい?」


「はい、自分としては使えるスキルだと思っているんで」


言葉に嘘は無いが、ダンジョンに転移した時にやる事がそこまで無いので、投擲を練習する時間が多かったというのが本音だった。


「確かにそこら辺に落ちている物を拾って投げれば良いだけだからな。リーナは今ソウスケがやミレアナさんみたいな速さで投げて、狙った所に命中させられるか」


ラックは魔法使いが本職だが、仲間のミーシャから短剣の扱いを教わっているリーナに二人の様に上手く出来るかを尋ねるが、リーナは首を横に振って答える。


「無理ね。ゴブリンが相手なら狙った所に投げる事は出来ると思うけど、あそこまで速くは・・・・・・ミーシャはどう?」


「う~~~ん、出来なくもないけど少し狙いがズレる可能性があるかな。二人はなんというか・・・・・・状況判断がすごく早かったね。私としては投擲の腕前よりそこに驚いたかな」


ソウスケとミレアナが狙った二体のゴブリンは外に出ていたメンバーが対峙していないゴブリンであり、対角線上に誰もいなかった為、攻撃が誤射になる可能性は低い。


馬車から降りてほんの数秒でそれを判断した二人にミーシャは本当に二人はFランクなのかと驚いていた。


(ブライドが実力だけで言えば自分達より上って言ってたのを少し・・・・・・半分信じていなかったけど、今確信に変わったよ。二人は実力だけで言えばCランクの冒険者に引けを取らない。というか、本当になんでFランクなのか不思議でならないよ。特例でランクを一段、二段飛ばしても良いと思うんだけどね)


ソウスケがバックスの首元に魔力の刃を突きつけた時に薄々勘付いてはいた。そして今ミーシャの中で確信に変わった。


二人は・・・・・・特にソウスケは見た目で実力を判断してはいけない冒険者だと。


(でも、ソウスケ君には悪いけど見た目はあんまり強そうじゃないんだよね。だから相手の実力をある程度読み取れる冒険者ならともかく、そういった事が出来ない冒険者にはよく絡まれるかもしれないね・・・・・・主にミレアナさんのせいで)


これからソウスケに降って来るであろう災難が薄っすらと予測出来たミーシャは心の中でソウスケに向かって合掌する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る