百六十二話漏れた殺気

肩に向かって魔力を纏い振り下ろされる大剣に対し、ミレアナの本能が警報を鳴らした。


(これは絶対に受けない方が良さそうですね!!)


コボルトウォーリア―はただ大剣を振り下ろしたのではなく、パワースラッシュという大剣術のスキルを覚え、スキルのレベルを上げる事で扱える技。


大剣を振り下ろす時に刃の切れ味、と技を放つ者の腕力を上昇させる。


身体強化を使い、魔力で体を防御しても体が切れない可能性は低い。

それに相手も身体強化を使って大剣に魔力を纏って切れ味を上げている。条件的には相手がやや有利。

所々刃が欠けているのにも関わらず、硬度が高い鉱石すら両断出来そうな迫力を放つ。


ミレアナは左手に持ち替えたミスリルの短剣に即座に魔力を纏わせる。

そして振り下ろされる大剣にほんの・・・・・・ほんの少しの瞬間だけ刃を合わせると大剣の軌道を逸らした。


攻撃を逸らす事に成功したミレアナは即座に後ろに跳ぶ。

大剣が振り下ろされた地面は綺麗に切断されている。まるで豆腐を切ったかのように切断面が荒れていない。


コボルトファイターがブロードストレートを放ち、続いてコボルトウォーリア―が大剣に魔力を纏ってパワースラッシュを放ってきた。

次はコボルトジェネラル仕掛けてくるとミレアナは予測していたが、正面にはいない。


両側面からも気配はない。上からも感じられない。残された選択肢は・・・・・・。


(後ろっ、ですか!!!)


気配を殺してミレアナの背後からコボルトジェネラルは右手に雷の魔力を纏い、真相に目掛けて抜き手を放った。

しかし背後から急激に膨れ上がる殺意を感じてミレアナはバク宙で空中に逃れる。


(最後まで気配を殺されていたら・・・・・・かなり危なかったですね)


最後の最後で気配を殺す事に気を緩めてしまい殺気が漏れてしまったのと、右手に纏っている雷から聞こえる小さなバチバチという音によってミレアナは致命傷を与える事が出来る攻撃を躱す事に成功する。


しかし躱しはしたが焦りは感じる。そしてまずは一体に狙いを定め、並行詠唱を始める。


この戦いの中で錬度が上がったため、詠唱の速度は速くなりミレアナは地面に着地するときには既に風の槍を作り終えていた。

そしてそれを右手で掴み、斜め下から投げる。


狙われたコボルトファイターはミレアナの肘打ちを喰らった影響がないとは言えないが、態勢を立て直す事は出来ており、ミレアナが放った風の槍の速度を考えると余裕を持って・・・・・・とはいかなくても回避する事が出来た。


コボルトファイターは即座に右に跳んで避ける。


「・・・・・・ふふ、少し判断が速過ぎましたね」


普段のミレアナからは想像出来ない悪女の様な笑みを浮かべ、人差し指を左に動かす。

その動きにつられて風の槍の速度が増して軌道が変わる。


コボルトファイターの足は片足が伸びきっていて、もう片足が屈んだ状態になっている。

片足で跳ぶ事は出来る。ただ、膝を曲げないと跳ぶ事が出来ない。

右足を地面に届かせる時間は無い。なら左足?


左足は伸びきっており飛ぶためには膝を曲げる必要がある。指だけでは飛べない。

そして途中で軌道が変わった事に加えて速さが増した風の槍。


これからが原因でコボルトファイターは風の槍を回避する事は不可能。

なら腕をクロスさせて防ぐ? 


魔力を腕に纏っている。ただ、それでも本当に防げるのか。

そもそも腕を曲げるだけの時間があるのか?


可能性がどんどん狭まる中でコボルトファイターが取った行動を腕をクロスする。

腕に関しては捨てる。ただ、まだ死ぬ訳にはいかない。

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