百五十二話考えても分からない物は分からない

圧縮されて放たれた風の弾丸はコボルトジェネラルに命中した。


だが、命を奪うには至らなかった。


(腕が抉れただけで殺す事は出来なかったか。というか、あの状態からどうやって躱したんだ?)


自分の急所に向かって放たれた弾丸に対し、体の向きが逆さまになっていたコボルトジェネラルは両腕を使ってその場から飛びのいた。


しかし完全に躱す事が出来ずに左肘より先を風の弾丸によって抉られた。


自己治癒のスキルのお陰で傷は塞がり血は止まったが、再生のスキルを持っている訳では無いので元に戻ってはいないな。


(殺す事は出来なかったけど、片腕を奪ったなら上々かな)


接近戦での手数は自身が上回ったと確信したソウスケは、インファイターのボクシング選手が良く使うピーカブ―スタイルでコボルトジェネラルに詰め寄った。


コボルトジェネラルは不利な状況になったのにも関わらず逃ずに向かって来るソウスケを迎撃しようとした。


左肘から先を失っても身体強化乱れておらず、蹴りも駆使して何とか勝利を手繰り寄せようとラッシュを止めなかった。


形は無茶苦茶だが、ストレートにジャブやフックとアッパー、下段中段上段に回し蹴り。踵落としに爪で斬り裂こうとしてくる攻撃にソウスケは冷静に対処して攻撃を加えていた。


パーリングの要領で拳や足を叩き、スキを突いて自身もストレートにフックや蹴り、抜き手などの攻撃を出し続けていた。


(こいつ・・・・・・段々と動きが速く、威力が強くなっていないか? それに戦い方も・・・・・・一旦確かめるか)


コボルトジェネラルが頭部に向かってハイキックを繰り出した瞬間にソウスケは股間に中段蹴りを決めた。


種族が違っても雄としての急所は変わらない為、蹴りを喰らったコボルトジェネラルは痛みの余り体がくの字に曲がる。


体が曲がり終わる前にソウスケは一回転して左足でコボルトジェネラルの腹に本日二度目の蹴りを直撃させた。


今度は完全にくの字に体を曲げたコボルトジェネラルが後方の木々をぶつかって、そのまま折りながら吹っ飛んだ。


コボルトジェネラルが完全に攻撃してこない状況を作ったソウスケは直ぐに鑑定を使って所持しているスキルを調べると、一般的な魔物と比べて多いスキルの中で目に留まった物があった。


「・・・・・・回転力? なんだそれ。別にラッシュの中で回転している様な動きは無かった筈だけど・・・・・・」


投擲による攻撃ならば放つ物体に対して効果はある様に思えるが、接近戦に置いては特に必要性は感じなかった。


だが、スキルの中にあった速度上昇というスキルを思い出し、コボルトジェネラルの向上した力と速さに無理やりだが納得出来た。


(確か力ってのは速さ×質量だったけ? それに言葉のままじゃなく、力が体の中で回転しているって考えると回転力も速さと力の上昇に繋がっているのか?・・・・・・駄目だ、あんまり難しい事は分からないな)


コボルトジェネラルの上昇した速度と力について考えるのを止めたソウスケは足に力を込め、コボルトジェネラルの体が回復する前に戦いを終わらせようとした。


折れた木々により視界が良好になり、速度を落とさずにコボルトジェネラルに近づく。


まだダメージが残っているため、直ぐに反撃をするのは無理だと思ったコボルトジェネラルは咆哮のスキルを使ってソウスケの動きを止めようとした。


咆哮によって確かにソウスケの体はほんの一瞬ではあるが確かに止まった。


しかし、それがコボルトジェネラルの勝利へと繋がるかはまた別。

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