百五十一話油断できない

自分に殺気を向けられた二人は直ぐ武器に手をかけた、


「・・・・・・全部で十体ぐらいか?」


「そうみたいですね。一体だけ実力が跳び抜けている個体がいるようですね」


十にも及ぶ数の中に跳び抜けた実力を持つモンスター。

ソウスケの脳裏に嫌な予感が浮かぶ。


(そういえば少し前にコボルトの集団を倒したな。ここまでの数だと前回と同様にコボルトの集団かもしれないな。それでもし本当にコボルトなら、ミレアナの口振りからしておそらくその時戦ったコボルトよりは強い筈だ)


気配感知を使ってモンスターの集団が向かって来る方向に対して注意を向けていると、薄っすらと姿が見えてくる。


「―――ちっ!! やっぱりか。ミレアナ!! 周囲のコボルトと上位種の相手を頼む!!!」


「分かりました!!! お気を付けてください!!!」


弓にを構えたミレアナは時間がもったいないので矢を使わずに、弓スキルで会得できる矢生産で魔力の矢を数本瞬時に生み出した。

そして数本同時に放たれた魔力の矢は綺麗な軌道を描いてコボルトと上位種の急所を貫いた。


ソウスケも目の前のコボルトと上位種の数体が邪魔なので、両手に二本ずつ風の槍を生み出して前へ突き出す。


突き出された風の槍はコボルトと上位種の体の大部分を削り、例え心臓や脳等の急所を貫かずとも大量出血により数秒で地面に倒れ伏した。


風の槍で貫かれたコボルト達が完全に死んだのか確認もせず、一番奥にいる一般的なコボルトと比べて倍近い体格のコボルトに鑑定を使って名前だけを調べた。


(コボルトジェネラルか。オークジェネラルとランクは一緒だけど、どう見てもこいつの方が厄介そうだな)


明らかにデブな巨体のオークジェネラルと比べてコボルトジェネラルはスピード特化のファイターに感じ、直ぐに人体強化のスキルを使った。


「はっ!!!」


ソウスケは片足で前方に飛んで右ストレートをコボルトジェネラルに放ったが、それをコボルトジェネラルは左に飛んで無傷で躱した。


右に避けたら左足で蹴りを叩きこもうと考えがソウスケの思惑を外れ、小さく舌打ちをしながら直ぐに風の魔力を纏い、体を大きく回して風の刃を放つ。


無理な体制で攻撃を放ったためソウスケはコボルトジェネラルに背を向ける形で地面に着地した。


しかしソウスケはそれぐらいでコボルトジェネラルが死ぬとは思っておらず、体を半回転させて構えるとそこにはコボルトジェネラルの姿は無かった。


「上かっ!!!」


視界にコボルトジェネラルがいないと分かったソウスケはコボルトの能力からして地面に隠れる事が出来ないので、上に飛んだと即座に判断した。


右手に魔力を込めて自分に襲い掛かって来る鋭い爪をギリギリでガードした。


「危っぶな!!!」


爪を受け止めた事で空中で止まったコボルトジェネラルをソウスケが見逃す訳が無く、バク宙の容量で腹に蹴りを入れた。


避ける事は出来ず、左手でソウスケの蹴りをコボルトジェネラルはガードしたが、蹴りの勢いを完全に殺せず後方に吹き飛んだ。


コボルトジェネラルに追撃をしようとして前に出ようとしたが、自分に向かって来る殺意を感じたソウスケは直ぐにバックステップで後ろに下がり、両手の手根を合わせて掌の間に風の魔力を凝縮して狙いを定める。


ソウスケに不意打ちを仕掛けたコボルトは地面に足が付く前に後頭部をミレアナが作った魔力の矢で打ち抜かれて、頭から地面に突っ込んだ。


攻撃の準備が完了したソウスケはコボルトジェネラルの腹部に目掛け、圧縮した風の弾丸を放った。

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