百四十話貯金は大切だよな

目的の場所に着いたソウスケは店の店主と交渉して、護衛中の食料を造って貰う事に成功した。


「考えましたねソウスケさん。オークやリザードマン等の肉を干し肉にするのはとても良い案だったと思います」


「だろ。あれだけ美味いんだから干し肉にしたって十分に美味しいと思うんだよ。四日間基本食が肉になるのは栄養が悪い気がするけど、あまり美味しくない堅いパンとか食べるよりは良いと思ってな」


一般的にオークやリザードマンの肉は料理として店で出されるが、干し肉に加工したりはしない。

理由はもの凄く単純で普通に焼いて味付けした方が圧倒的に美味しいからだ。


なので基本的に低ランクのモンスターの肉が干し肉として加工されることが多い。


「確かにバランスが偏るかもしれませんが、戦闘中にお腹が空いて隙が出来て怪我を負ってしまうなんて恥ずかし過ぎます。それにソウスケさんが店主の方に話していたのは何か新しい干し肉の作り方ですか?」


「・・・・・・いや、まぁ確かに店主のおっさんは知らなかったから新しい方法だったのかもしれないけど、何でいきなりそういう考えになるんだ?」


「何でと言われても・・・・・・ソウスケさんだからでしょうか?」


「・・・・・・答えになっていない様で答えになっている気がするな」


ソウスケとしては見せて貰った干し肉が細く、ビーフジャーキーのような物しかなかったのでネットで見た事がある知識を店主に話して、思いっきりガブリと食べられるような干し肉を造って貰うように頼んだ。


報酬として初めはオークの上位種の肉を渡そうとソウスケは考えていたが、それでは自分がアイテムボックスのスキル持ちプラス、中の時間が止まるという性能を持っているとばれる為、報酬は金貨一枚にした。


店主は報酬としては多いと思ったのか遠慮していたが、ソウスケは自分が出来ない事をやって貰う分も含んでいると言って、押し付けるように金貨を渡した。


「それにしても、ソウスケさんは太っ腹なところがありますよね」


「そうか? というか、そう言うって事はやっぱり金貨一枚は報酬として高すぎたのか?」


「そうですね・・・・・・干し肉にする量が量だったため妥当かもしれないですけど、私的には少し多いかなと思いました」


ミレアナに報酬としては多すぎるのではと言われたソウスケは落ち着いて金貨一枚を、日本円で考えると確かに多すぎたかもしれないと、今更思い始めた。


(そうだよな、金貨一枚は日本円で百万円・・・・・・日本では新卒の給料六~七ヵ月分ぐらいか。この世界に来てから完全に金銭感覚が麻痺しているのは確かだな。あのエルフの店でローブと魔法袋を買った時も本来ならもの凄い大金だった筈だったけど、一括で払ったもんな。それにトーラスさんから試作品ので貰った白金貨五枚って日本円にすると五億円だろ・・・・・・・・・・・・物価や価値観が違っても、あんなにサラッと五億円渡すって今考えると正直やばいどころじゃないよな)


自信も使うところではガッツリお金を使うと自覚しているので、今後は報酬で得たお金やオセロやチェスの売り上げの半分ぐらいは貯金したほうが良いという結論に至った。


「ただ、今まで通り使うべきところでは使っていかないとな」


ミレアナの武器は今のところミスリルの短剣だけ。本来なら弓がメインの武器だがソウスケは持っていなかったので今まで短剣で我慢して貰っていた。

今の二人のランクで言えばミスリル短剣だけでも上等な武器だが、何時どんなモンスターに会うかは分からないので、出来れば護衛依頼までには上等な弓をミレアナに買い与えたかった。


(もう一度あのエルフの店に行って上等な弓を買わないとな・・・・・・金はかなり飛ぶだろうけど)


はははとソウスケは苦笑いになりながらも、必要な投資なため惜しむつもりは一切なかった。


そして二人は護衛中の保存食の為に買い物を続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る